IoT(Internet of Things)の活用を目指して、PoC(Proof of Concept=実証実験)に着手したものの本格的なIoTの活用に移行できないプロジェクトが増えている。

 「トップダウンで経営層から『当社でもIoTを活用できないのか』と言われてPoCを始めたものの、あまりにも要件が曖昧で、PoCが途中で止まってしまうケースが散見される」とIoTを使ったシステム導入を支援するITベンダーのあるコンサルタントは証言する。

 こうした「PoCから先に進めない」IoTプロジェクトの傾向をまとめると、大きく3つの壁にぶつかっていることが分かった。「使い方・効果の壁」「費用・期間の壁」「技術の壁」だ。

IoTを実現する際に多くの企業が直面する「カベ」
IoTを実現する際に多くの企業が直面する「カベ」
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トップダウンで始めると使い方が分からない

 トップダウンで「IoTを導入しろ」と言われたことがきっかけで始まったプロジェクトがぶつかりやすいのが、使い方・効果の壁だ。そもそも「IoTの効果が不明。そもそも自社のどのような業務やサービスにIoTを使っていいか見当もつかない」というケースだ。

 2つめの費用・期間の壁、3つめの技術の壁は、PoCを終えて「いざ本番へ移行しよう」という企業が乗り越えられないケースが多いという。

 製造工程の見える化を実現するために、まずはPoCとして1つの工場の3つのラインでIoTを実現するといったプロジェクトがあったとしよう。PoCではそれぞれのラインに最適なセンサーやアプリケーションを開発し、ある程度見える化に成功する。ところがこれを他の工場に展開しようとすると、工場内の温湿度といった条件や対象となる製品の製造工程が微妙に異なり、PoCで利用したセンサーや、開発したアプリケーションが本番では利用できないといったケースが発生する。

 こうした問題を解決しようとすると、本格的なIoT導入に向けた新たなシステム構築プロジェクトが必要になる。「多くの企業はこの段階でITベンダーに見積もりをとった結果、想定よりも費用や期間が膨らみ、IoTの活用を見送る」と冒頭のコンサルタントは説明する。

 実際に本番の開発に移行したとしても、1人のエンジニアが、IoTシステムの開発に必要な技術をカバーできることは少ない。センサーやデバイスの開発には組み込みやハードウエアの知識が、センサーから取得したデータを送信するためにはネットワークの知識が必要になるからだ。

 結果、IoTを本格的に導入するためのプロジェクトは、PoC時の想定よりも、プロジェクト費用や期間が増大するだけでなく、プロジェクトに参画するITエンジニアが増えてマネジメントも難しくなる。

センサーからアプリケーションまで提供

 前述したようなIoTの壁を乗り越えるために今、続々と登場しているのが「センサーを設置するだけ」「スマートフォンを用意するだけ」といった簡単な作業で、ラクにIoTを実現するための製品やサービスだ。

 簡単でラクにIoTを実現するためのサービスの多くは、センサーや、センサーのデータを送信する通信機器やサービス、そしてデータを蓄積して活用するために必要な機能を備えたクラウドサービスを一体として提供している。