2015年に米国で開催された米IBMの人工知能(AI)システム「Watson」関連のイベントで、日本のWatsonユーザーがIBMの担当者に詰め寄るシーンがあった。ユーザーが利用している「Watson API」の1つが2016年に「サンセット」になると聞いたからだ。サンセットはサービスが終了することを指す。
この様子を目撃したという参加者は「ユーザーが不満を持つのも無理はない」と話す。Watson日本語版の正式発表は2016年2月だが、一部ユーザーは2015年から導入を進めていた。APIの終了で影響を受けたのは、試行錯誤しつつWatsonの導入を進めていたこれらの先行ユーザーだ。
同じ役割を果たす後継APIは、機能や使い勝手に関して大幅に強化された一方で、互換性はなくデータをそのまま引き継ぐことはできない。
しかしAPIが使えなくなる以上、先行ユーザーは後継APIを使わざるを得ない。従来のAPIを使っていたユーザーの多くが、現在は後継APIに移行したとみられる。
APIの種類は倍増、統廃合も
前回紹介したように、Watsonの中核を成すのがWatson APIだ。ビジネスでの利用を想定して、チャットボットやテキスト分析、音声認識といった機能を提供する。その中身は機械学習など複数の要素技術を組み合わせたもので、「深層学習(ディープラーニング)も自然言語処理、音声認識、画像認識などの用途で幅広く使っている」と日本IBMの元木剛理事ワトソン・ソリューション担当は話す。WatsonユーザーやパートナーからはAPIの使い勝手の良さを評価する声を多く耳にする。
問題はAPIの仕様変更が相次ぐことだ。日本語版の正式発表からの約2年でAPIの数は倍増。単純に増やすのではなく、統廃合を繰り返している。