ここまで紹介してきたのは、MVNOの現在の主流といえる格安スマホでの戦略である。ここ数年、MVNO事業者が注目しているのは、今後の急成長が見込まれるIoT(Internet of Things)だ。飽和状態に近づきつつある人間相手のスマホビジネスより、機械向け通信でのビジネスに期待しているようだ。
空き帯域を有効活用
IoTでの活用に期待するのにはMVNOならではの理由がある。
MVNO業者の商品である通信回線は、NTTドコモなどの大手キャリアと契約して仕入れている。契約時に指定できるのは利用可能な帯域幅だけ。時間帯や上り下りで変えることはできず、常時同じ帯域幅で契約しなければならない。
だが、ユーザーが実際に利用する時間帯にはばらつきがある。朝や昼、それから夕方以降は下りのトラフィックが圧倒的に多い。その半面、深夜や上りの帯域は空いている。こうした空き帯域は、せっかくお金を払って仕入れながら、現在は“捨てている”状態だ。このもったいない帯域を活用する手段として、MVNO事業者はIoTに期待している。
具体的には、「上りは高速だが下りは低速」「500Gバイトの大容量」「夜間専用」といったIoT向けの特別なプランを用意するMVNOが出てきている。例えばビッグローブは、上りで100Gバイトまで高速に使えるIoT専用プランを月額6250円で提供している。スマホ向けと比べると格安だ。