DRAMに近い速さで、消えない 企業システムの構成が一変

 3位の「ストレージクラスメモリー」は、SSDよりも高速で、DRAMよりも大容量化しやすい次世代の不揮発性メモリーのこと。代表例は米Intelと米Micron Technologyが共同開発する「3D XPoint」である。ほかにも富士通セミコンダクターと米Nanteroなどが共同開発する「NRAM」、韓国サムスンの「Z-NAND」など、多様な方式が登場しており、各社が製品化に向けてしのぎを削っている。

I/Oのボトルネックを解消

 ストレージクラスメモリーを推薦した野村総合研究所の石田氏は、「現状の企業情報システムは、I/O性能がシステム全体のボトルネックになりがちだ」と指摘する。例えばストレージのSSDやハードディスクのアクセス速度が遅いために、プロセッサーが搭載する多数のコアがI/O待ちで使い切れない状態になっている。

 しかもこの傾向は、スケールアウト型のシステム構成を採用するユーザー企業が増え、拍車がかかっているという。スケールアウト構成の場合、サーバー間を結ぶイーサネットの遅延と帯域の制約でI/O性能がさらに下がるケースがあるためだ。

 ストレージクラスメモリーはアクセス速度がマイクロ秒程度と、SSDと比較すると文字通り桁違いに速い(図1)。ストレージクラスメモリーが加わるとI/O性能のボトルネックが解消され、企業情報システムの構成が大きく変化する可能性を秘める。「スケールアウト構成によって過度の分散が進んだ現状から、集中への揺り戻しが起こる」と石田氏は予想する。

図1●ストレージクラスメモリーの位置付け
図1●ストレージクラスメモリーの位置付け
DRAMとSSDの中間に位置する。近い将来、アクセス時間がDRAM並みに近づくことを目指した研究が進んでいる
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深層学習への応用に期待

 さらにストレージクラスメモリーは、前述の米HPEの「The Machine」のような、新型のコンピュータアーキテクチャーの中核技術の一つとしても期待を集める。DRAMを代替し、メモリーとストレージを兼ねる使い方だ。

 ただし、新型のコンピュータアーキテクチャーに応用するには、技術的なハードルがまだ残る。その一例は、アクセス時間のさらなる高速化である。日本ヒューレット・パッカードの三宅氏は「各社が試作したストレージクラスメモリーは、アクセス時間がマイクロ秒の水準。DRAMから置き換えるにはまだ遅い」と指摘する。数十ナノ~数百ナノ秒でアクセスできるストレージクラスメモリーの実用化が期待される。

 一方、SSDを代替する「超高速ストレージ」としての応用は、さほど遠くない時期に広がりそうだ。例えば国立情報学研究所の佐藤氏は、「ディープラーニングのシステムを運用する目的で、広帯域で高速のメモリーを求める動きが自動車会社などから出ている」と話す。ディープラーニングでモデルの精度を高めるには、大量のデータを学習するプロセスを高速に回す必要がある。ストレージクラスメモリーの高速性を存分に生かせるアプリケーションといえる。