ITインフラテクノロジーAWARDは、企業が今後注目すべき技術・製品・サービスを有識者の審査を通じて日経BP社が選出するもの。毎年1回実施しており、今回で3回目となる。(参考記事:第1回第2回

 2017年に企業が最も注目すべき「グランプリ」には、サーバー/仮想マシンを利用せずにシステムを構築する「サーバーレスアーキテクチャー」を選出した。また、グランプリに次ぐ2位にBotで対話型のインタフェースを実現する「カンバセーショナルUI」を、3位には次世代の不揮発性メモリー「ストレージクラスメモリー」をそれぞれ選んだ。さらに、5人の審査員が個人の立場で注目する技術も一つずつ挙げてもらい、「審査員特別賞」とした。

 審査員は、野村総合研究所の石田裕三氏(上級アプリケーションエンジニア)、ウルシステムズの漆原 茂氏(代表取締役社長)、国立情報学研究所の佐藤一郎氏(アーキテクチャ科学研究系 教授)、ITジャーナリストの新野淳一氏(Publickey 編集長/Blogger in Chief)、楽天の森 正弥氏(執行役員 楽天技術研究所 代表)の各氏が務めた(写真1)。

写真1●審査会の様子
写真1●審査会の様子
左から石田 裕三氏、漆原 茂氏、佐藤 一郎氏、森 正弥氏、新野 淳一氏 (撮影:中野 和志)
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有力技術が百花繚乱で激論に

 グランプリ、2位、3位、特別賞に選出された技術以外にも、さまざまな有力候補が審査対象となった(表1)。

表1●選出から漏れたものの選考会で活発に議論が交わされた主な技術
表1●選出から漏れたものの選考会で活発に議論が交わされた主な技術
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 特に議論が盛り上がった技術の一つは、「ディープラーニング用フレームワーク」。人工知能(AI)の分野で注目を集めるディープラーニングのプラットフォーム開発に役立つフレームワークである。グランプリの有力候補だったが、「ユーザー企業は自前でプラットフォームを開発するよりも、クラウドベンダーが提供するAPIサービスを利用する傾向が強まるのではないか」という意見で審査員の評価がまとまり、選出を見送った。

 以下では、グランプリ、2位、3位の技術の特徴を、各審査員や当該技術に詳しいITエンジニアらのコメントを交えて紹介する。

サーバー無しでシステム構築 運用コストが1桁安くなる

 サーバーレスアーキテクチャーはその名の通り、サーバー/仮想マシンを利用せずにシステムを構築するアーキテクチャーのことだ。特に、ストレージへのデータ書き込みなどのイベントが発生した際にコード(アプリケーション)を実行する環境を提供する「イベント駆動型コード実行サービス」が中核の役割を担う。具体的なサービスには、米Amazon Web ServicesのAWS Lambdaや米MicrosoftのAzure Functions、米IBMの「OpenWhisk」などがある。

 ITジャーナリストの新野氏は、「クラウドの特性を生かしたアーキテクチャーだ」と高く評価する。事実、パブリッククラウドを利用する企業の間では、イベント駆動型コード実行サービスを活用したシステム構築が進んでいる。他の審査員も賛同し、グランプリに輝いた。