「共創」十番勝負 NTTデータ編の第3回は、「極言暴論」の木村の眼で同社の共創による新規ビジネス創出の取り組みを斬る。第1回の自薦イチオシ事例の「日立造船との共創」、第2回の佐々木執行役員へのインタビューを通じて、はたして木村はどう評価したのか。

 以前、NTTデータの役員らと海外でのIR(投資家向け広報)活動の話題になった時、「海外の投資家やアナリストにNTTデータの事業内容を説明するのが難しい」という話を聞いた。米デルのITサービス部門の買収など、海外でM&A(合併・買収)を続けているため、海外の投資家らの関心も高まっているが、彼らにはNTTデータの日本国内の事業内容は決して分かりやすいものではない。

 「『NTTデータはSIerだ』と説明すればよいのでは」と思う読者もいるだろうが、SIerは典型的な和製英語だ。一見、System Integrator(システムインテグレータ)の略称のようだが、それならばSIerではなく“SIor”でなければいけない。では、システムインテグレータと略さずに言えば、事業内容が正しく伝わるかと言えば、それも無理だ。

 システムインテグレータとは、様々な機能(ハードウエア、ミドルウエア、各種アプリケーションソフトなど)を1つのシステムに“インテグレート”する存在。NTTデータを代表とする日本のSIerは、純粋なインテグレータとは言い難い。もちろんミドルウエアなどは利用するが、顧客の個別要求に応じて、いかようにもシステムを“手作り”する。そして、その保守運用も請け負い、ユーザー企業の要求通りに改変し続ける。そんな仕事がSIerだ。

 米国企業ならパッケージ製品(今ならクラウド)をそのまま使うようなシステムでも、日本のユーザー企業はスクラッチ開発など手作りを望んだ。だから、SIerは海外で存在しないとは言わないが、極めて日本的なビジネスとして発展した。そして日本固有のSIerの筆頭格がNTTデータだ。富士通や日立製作所、NECのようなコンピュータメーカーではないため、海外の投資家からすると、事業が分かりにくいのはやむを得ない。

 ただ、今や「世界から見て分かりにくいビジネス」と済ましていられる状況ではなくなりつつある。日本のユーザー企業が変わりつつあるからだ。基幹系など付加価値の少ないバックヤードの独自システムにカネを使わず、デジタルビジネス関係などにIT投資の比重を移しつつある。この領域は、人海戦術による大規模開発というSIの適用が難しい。人月商売というビジネスモデルに危機が忍び寄っているわけで、NTTデータがどんな手を打つのかは業界の関心事でもある。