「共創」十番勝負 NEC編の第3回は、NECの新規事業やイノベーションの取り組みを、「極言暴論」の木村の眼で斬り込む。第1回では、NECイチオシの共創による新規事業を、第2回では新規事業の担当役員へインタビューを掲載した。それらに対する木村の評価はいかに?

 「企業にとって大きな問題は、成長戦略が描けなくなっていることだ。企業がどのように変わればよいのか、何に投資すればよいのか。予見可能性が昔に比べ、がたんと落ちた」。NECで新規事業などを担当するCMO(チーフマーケティングオフィサー)の清水隆明 取締役 執行役員常務はインタビューの冒頭で、一般論としてそう語ったが、「成長戦略が描けない」という問題が最も重くのしかかるのはNEC自身のはずだ。

 NECはこのところ業績低迷が続く。特に売上高は10年以上の長きにわたり減少傾向にあり、2001年3月期の5兆4097億円をピークに、前期の2016年3月期には2兆8212億円にまで減少した。今期の4~9月期も減収減益で、売上高は前年同期比8.3%減。PC事業などの既存事業が衰退しリストラに追われる一方で、新たな成長戦略の柱を創れなかったわけだ。

 まさにNECにとっては“失われた21世紀”である。その間、IT業界は激変を遂げた。米アップルのiPhoneは、2017年1月9日で誕生から10周年である。世界を変えたスマートフォンは2007年1月に発表された。情報システムの在り方に激変をもたらしたAWS(Amazon Web Services)が公開されたのが2006年7月、コミュニケーションやメディアの在り方を一変させた米フェイスブックの設立は2004年2月のことだ。

 IT業界におけるイノベーションの担い手は、なにも“尖った”企業ばかりではない。最近では米国の重厚長大産業の雄、GE(ゼネラル・エレクトリック)のように、IoT(インターネット・オブ・シングズ)などを活用した新サービスを生み出し、“ITベンダー化”する大企業も登場している。NECが成長戦略を描けなくなったのは、こうしたビジネス環境の変化のスピードについていけなくなったからにほかならない。

 実はNECには、うまく製品・サービスに仕立ててビジネスモデルを確立すれば、新たな市場を創出できたであろう先端技術がいくつもある。例えば、ソフトウエアによってネットワークの設定などの動的変更を可能にするSDN(ソフトウエア・デファインド・ネットワーク)。NECが真っ先に製品化したものの、既存の通信機器、ネットワーク機器の枠組みにこだわったために、後発のシスコシステムズなどに市場の主導権を奪われる結果となった。