映画「マトリックス」でよく使われた特撮技法を実現するシステムです。スローモーションで動く被写体を、カメラが移動しながら撮影しているように見える動画が撮れます。USBカメラ60個を直径3.6mの円形に配置し、30台のRaspberry Pi 1 Model B+で制御しつつ撮影します(図1)。

図1●技術賞の「360度の方向からカメラ60台を使った特撮ができるバレットタイム撮影システム」
図1●技術賞の「360度の方向からカメラ60台を使った特撮ができるバレットタイム撮影システム」
[画像のクリックで拡大表示]

 60個のカメラは、すべて同一点に視点を合わせておかないと、静止画を並べて動画にした場合にブレが生じて非常に見づらくなります。このためカメラ設置時にマーカーを置いて、マーカーが画面の中央になるようにカメラの視線を手動で合わせます。このとき画面中央とマーカーのずれを求めて、グラフィックス表示するソフトを作りました。これでチェックしながら効率良くカメラの視線を合わせられます。それでも残る微妙なズレをデータとして記録し、動画作成時に補正する機能があります。これらの機能をPythonと画像処理ライブラリのOpenCVで作成しました。

 Raspberry Piで撮影した静止画は、ネットワーク経由でマスターPCが集め、フリーソフトのffmpegを使って動画に変換します。実際の動画がYouTubeで見られます。

 苦労したのは、直径が3.6mと大きいため自宅内では組み上げられなかったことです。Raspberry Piを4台、カメラが8台程度の小規模システムで開発とデバッグをして、全体の試験には、公民館などの広いスペースを借りました。