日々、チームで仕事をする機会が多いIT現場。そこではチームという組織の単位でパフォーマンスを最大限引き出すのがリーダーの最も重要な仕事といって差し支えないだろう。

 情報システムの導入プロジェクトや運用保守など、仕事の内容や場面はさまざまだ。だが、チームとして結果を残していくには、リーダーはメンバーのモチベーションを保ち、日々成長を促し、同じ目標に向かって労を共にするという意味では変わりがない。

 そこで重要な要素となってくるのが今回のテーマである「褒め方」だ。「褒めることで人は育つ」という風潮が強くなっている昨今、IT現場でも褒めることは重要である。では、IT現場では果たしてどのように褒めたらよいのか。IT現場だからこそ気を付けるべき点はないのか。褒める基準は必要か。これらの点に触れながら、IT現場の褒め方を考えてみたい。

 なお、本記事では主に、有期のプロジェクトや業務におけるチームパフォーマンスを最大化する即効性の高い褒め方を対象とする。メンバーの将来のキャリアを考えた褒め方もあるが、こうした中長期的な視点は別の機会に譲ることにする。

 また、本記事では便宜上、褒める立場にいる人を「リーダー」と呼ぶ。実際のIT現場では、先輩・後輩といった場合の関係もあるが、褒める側の立場を分かりやすくするためにリーダーと呼ぶので、適宜置き換えて読んでもらいたい。

褒め方でパフォーマンスが低下

 筆者はこれまで、IT現場でさまざまなタイプのリーダーを見てきた。折に触れてメンバーを褒めるリーダー、進捗会議の場で必ずメンバーを褒めるリーダー、毎月「MVP」を選出するリーダーなどがいた。

 一方で、めったに褒めないリーダーもいた。注目したいのは、それぞれのチームのパフォーマンスである。実はチームという観点で見た場合、よく褒めるリーダーのチームが必ずしもよいパフォーマンスを出してはいなかった。もちろん、チームの雰囲気は悪くはない。だが、どちらかといえばめったに褒めないリーダーが率いるチームのほうが、パフォーマンスが高かった。

 一般に、人は褒められることで自らの努力が報われたとか、自分の成長が確認できたと感じる。また、それがメンバーのモチベーションの向上・維持につながる。その意味では、リーダーはメンバーを褒めるべきだ。

 にもかかわらず、前述のように褒めていてもパフォーマンスが出ていない事実がある。筆者はこれを「褒め方が悪い」という見方で捉えている。つまり、褒め方が悪いと逆にチームのパフォーマンスを低下させるのだ。

 例えば、リーダーがなぜ褒めるのかという「目的」を正しく理解せず、手当たり次第に褒めるリーダーがいる。本来、チームのパフォーマンスを想定した場合、褒める目的は大きく三つある(図1)。これを理解しなければ、かえってやる気を落としかねない。

図1●褒める目的
図1●褒める目的
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