世界を目指すメルカリだが、日本ではライバルたちが牙城切り崩しを狙う。フリマの元祖を自認するFablicは楽天の傘下入りを選択。資金力を背景に手数料無料などの策を打ち出した。C to C(消費者間取引)の草分けであるヤフーも事実上、フリマに参入した。果たしてメルカリの足下は盤石か。

 「はい、販売手数料を引いて、4500円。…何だよ、手数料だよ、しょうがないだろ。取られるのは君だけじゃないし、取るのもオレだけじゃない」

販売手数料が無料であることをアピールするフリルのテレビCM
販売手数料が無料であることをアピールするフリルのテレビCM
(出所:Fablic)
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 フリーマーケットで買い物をした客と店主。そこへ見るからに怪しげな男性が現れ、代金を払おうとする客の手から現金を取り上げた。手数料を差し引いて、店主に渡す――。

 フリマアプリの「FRIL(フリル)」を運営するFablicが、2016年10月に放映を始めた、テレビCMの一幕だ。同社は2012年7月にフリルの提供を開始。2016年11月時点のアプリダウンロード数は600万件である。

 テレビCM内で連呼していた「手数料」。メルカリに対抗するため、フリルが打ち出した策が、この手数料を無料にすることだ。同社はCMの放映と同時期に、それまで出品者から売り上げの10%を徴収していた販売手数料を無料にした。メルカリの販売手数料は10%である。

 「手数料が無料なのは対メルカリの最大の強み。フリマの売り手は、最も儲かる場所で売りたいと考えるからだ」。Fablicの堀井翔太代表取締役CEO(最高経営責任者)は、こう語る。テレビCMと販売手数料の無料化。二つの施策で知名度を高めるとともに出品数を増やす。売り物が増えれば客も増えて、売買が活発になり、さらなる出品増や利用者増につながる。Fablicが目指すのは、こんな正のスパイラルだ。

 効果はすぐに現れた。10月の出品数は、前月比で78%増加。9月の同16%増を大きく上回った。11月も同35%増を見込む。10月の流通総額の伸びも、前月比8%増だった9月時点を大きく上回る同66%増を記録した。

楽天傘下入りで「メルカリにないことを仕掛ける」

Fablicの堀井翔太代表取締役CEO(右)と楽天の井上貴文C2C事業部ジェネラルマネージャー(左)
Fablicの堀井翔太代表取締役CEO(右)と楽天の井上貴文C2C事業部ジェネラルマネージャー(左)
(出所:Fablic)
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 テレビCMや販売手数料の無料化の「原資」となったのは、同社の親会社である楽天の「資本力」(堀井CEO)だ。楽天は2016年9月、Fablicの全発行済み株式を取得して完全子会社にした。取得金額は非公表だが、数十億円のもよう。

 買収した楽天も、自前のフリマアプリ「ラクマ」を運営する。買収をテコに両者の連携を図り、同事業を伸ばす考えだ。

 「フリマアプリの機能や使い勝手はある程度コモディティー(日用品)化して、機能や使い勝手の差は利用者が感じられるほどには大きくなくなった」。同市場に対する、堀井CEOの見立てだ。今後の成長に必要なものとして堀井CEOが挙げるのが「利用者のマインドシェアを得るための資本力」だ。

 実は楽天のラクマも、2014年11月のサービス開始から販売手数料を無料にしてきた。アプリのダウンロード数は2016年11月時点で400万件だ。