2016年10月、米アップルが「Apple Pay」のサービスを日本で開始した。それから2カ月、Apple Payによる支払いは当たり前の光景になりつつある。

 Apple Pay上陸を機に、日本の決済サービスは一気に多様化した。米グーグルのAndroid Pay、中国アリババグループのアリペイのほか、国内事業者の新決済サービスも普及し始めた。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向け、日本の決済システムはどう変わっていくのか。最新動向を4回シリーズで解説する。

 中国本土での導入店舗は200万以上、アクティブユーザーは全部で4.5億人超。2016年6月までに世界中の70カ国及び地域に進出し、中国本土以外では台湾・香港・マカオを含めて8万の店舗に決済サービスを提供――。急伸する中国発のスマートフォン決済サービス「アリペイ(支付宝)」の最近の実績だ。

 アリペイは、中国アリババグループのアント・ファイナンシャルが提供する決済サービスだ。ユーザーがスマートフォンアプリを操作して、決済情報を含むQRコードを画面に表示。店舗の決済端末、または決済アプリを入れたタブレットやスマホのカメラなどで読み取って決済する。利用代金は、中国の銀行口座から直接引き落とされる。つまりアリペイは中国人向けの決済サービスだ。

写真1●アリペイのスマートフォンアプリの画面(左)と利用シーンの例(右)
写真1●アリペイのスマートフォンアプリの画面(左)と利用シーンの例(右)
(出所:アント・ファイナンシャル)
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 アント・ファイナンシャル 国際事業部シニアディレクターの郏航氏は、「中国に限らず、世界にサービスを提供することを目指している。目標は世界各地のパートナーと一緒に、10年以内に20億人に金融サービスを提供することだ」と言い切る。

 そのアリペイが日本に上陸したのは2015年10月。2016年11月現在、約3000店舗でサービスを提供しているという。利用可能店舗には、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。百貨店は高島屋、近鉄、東急、小田急、東武、大丸。家電販売店だとビックカメラ、ヤマダ電器、エディオン、上新電機。総合免税店ならドン・キホーテ、多慶屋、LAOX、キリン堂、杏林堂。さらにはコンビニエンスストアのセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート。最近はりんくう及び御殿場のアウトレットでも使えるようになった。

 アント・ファイナンシャル日本業務開拓責任者の王磊氏は、「次の春節(2017年1月)の前に、より多くの大型アウトレット、ブランド、免税チェーン店、ドラックストアがサービスを導入し、訪日するアリペイのユーザーに便利な決済と旅行体験を提供する」と胸を張る。

 ユーザーにとってのメリットは、決済だけにとどまらない。王氏は「アリペイはただの決済ツールではなく、ライフスタイルに関わるアプリ。大量のサービスと情報が格納されており、言語が通じない地域でも中国語で現地の店舗情報やアリペイの割引情報を確認できるし、他の利用者の口コミも確認できる」と説明する。4.5億人に情報を発信可能と考えると、マーケティング面での効果も大きい。

写真2●スマートフォン用アプリでは、店舗のキャンペーン情報なども受け取れる
写真2●スマートフォン用アプリでは、店舗のキャンペーン情報なども受け取れる
(出所:アント・ファイナンシャル)
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