ERP(統合基幹業務システム)に入力したデータを、すぐに経営状況の分析に役立てたい。2017年はこんな要望に応える「リアルタイムERP」の導入が進みそうだ。

 リアルタイムERPは、これまでの業務処理機能に加え、大量データを瞬時に処理する機能を備えるERPだ。利用者は、経営データを把握するためにほかのシステムを操作する必要はなく、現時点の販売額や在庫、生産実績などをERPにログインしたまま見られるようになる。

 ERPを利用して構築する基幹系システムは、業務で発生した大量の明細データを蓄積する。これまでこうした明細データを業務に利用したり、経営指標として活用したりするには、別途、BI(ビジネスインテリジェンス)ソフトやDWH(データ・ウエアハウス)などを利用した分析系システムを構築する必要があった。明細データが大量で、基幹系システム内では処理できないためだ。

 それでは、基幹系と分析系のシステムを個別に構築すればよいかというと、ここでも問題が起きる。同じデータを基にしているにもかかわらず、双方のシステム間でのデータの整合性がとれなくなったり、ほしいデータにタイムラグが発生したりする。

 こうした状況を打開するのが、リアルタイムERPである。SAPジャパンの「S/4HANA」やワークスアプリケーションズの「HUE」などが該当する。

 SAPジャパンのS/4HANAの場合、前版の「R/3(SAP ERP)」で採用していたRDB(リレーショナルデータベース)をやめ、動作基盤にインメモリーデータベースを中核にしたプラットフォーム「HANA」を採用している。これにより、基幹系と分析系の壁をなくすのが狙いだ。HANAはカラム型でデータを格納したうえで、メモリー上で動作する。ERPに蓄積したデータに対して、検索や集計などの処理を高速に実行できるようになった。

 ワークスアプリケーションズのHUEは、OSS(オープンソース・ソフトウエア)の分散データベース(DB)「Apache Cassandra」を採用したクラウドERPだ。大量データの処理速度を向上させるためである。蓄積したトランザクションデータを、高速に活用できるようになる。

 このほかにも日本マイクロソフトが2016年11月から提供を始めたクラウドERP「Dynamics 365」は、BIの機能をアプリケーションに組み込み、大量データを使いながら業務を進められるような機能を備えている。今後もさらに、リアルタイムにデータを活用可能なERPが増えそうだ。