2016年は日本企業の「働き方」に大きな関心が集まった。9月には安倍晋三政権で働き方改革実現会議が始動。翌月には電通社員の自殺が労災と認定されるなど、長時間残業の撤廃に向けて企業の意識が高まっている。

 働き方改革を実現するうえで期待がかかるのが「HRテック」。「HR」(人事)とテクノロジーを組み合わせた造語で、ヒトに関する様々な情報を分析し、その結果を生かして社員の働きやすさと生産性の向上を両立しようとする取り組みを指す。

 HRテックの用途は採用や配属、評価など様々な業務に広がる。その1つが「行動センシング」による人材育成だ。

 行動センシングとは、社員1人ひとりが身に付けたセンサーを通じて、業務時間中の行動データを取得する、IoTを応用した取り組みだ。「成果を出す社員はどのような行動を取っているか」を明らかにしたり、逆に「成果を出せない社員はどのような課題を抱えているか」を浮き彫りにしたりする。例えば、成果を出す社員が休憩時間などに同僚や上司と多くのコミュニケーションを取っていることがセンサーデータの分析から分かれば、職場内の対話を促進するような仕掛けを作り込むことで、若手や伸び悩む社員に成長のきっかけを与えることができる(関連記事:「仕事ができる人の“脳内”を拝見」)。

 IoTを人事面に応用した行動センシングに対し、人工知能(AI)も含めたビッグデータ分析を生かすのが「ピープルアナリティクス」。勤怠や評価、配属などの人事データをAIなどで分析し、適切な人材配置や昇格などに浮かしていく。「相性が良く成果が出やすい上司と部下の組み合わせ」などを明らかにできれば、配属やチーム作りにも生かせる(関連記事「あの上司と組み合わせてはいけない部下は誰?」)。