既存の大手企業にない発想と小回りのきくスタイルで、新しい事業モデルを生み出すスタートアップ企業。IT分野のスタートアップ企業の動向をまとめた2016年のランキングは、そのダイナミズムを実感させるものになった。
1位に入った「IT企業の「リア充アピール」はオッケーである」は、優れたIT人材の獲得競争が激化するスタートアップ企業の動向を切り取ったもの。技術者向け勉強会の様子をはじめ、活気にあふれた社内の様子を社外にアピールする。ただ会社紹介Webサイトを作るのではなく、実際に社員同士の交流を通して自社を知ってもらう活動が、人を惹きつけるコツのようだ。
世界を驚かせた米国の大統領選挙。次期大統領に決まったドナルド・トランプ氏の言動は、米シリコンバレーのスタートアップにも衝撃を与えた。「トランプ大統領」に身構えるシリコンバレー、唯一のパイプはPayPal創業者」ではその動揺ぶりを解説。IT政策は不透明ながら選挙期間中にシリコンバレーのIT企業への攻撃姿勢が目立ったトランプ氏に対して、スタートアップ企業は難しい対応を迫られそうだ。
トランプ旋風の余波は他の記事にも。「シリコンバレーの『トランプ対策』、求人やWebサイトがカナダへ移動」は、外国人の雇用難を危惧する米国企業が、隣国のカナダへ注目している様子をレポートした。
活況を呈する人工知能(AI)による自動運転分野でも、スタートアップが存在感を高めている。「スタートアップと連携急ぐ自動車大手、AIの米NautoはトヨタやBMWと」からは、既存産業の枠組みを崩すスタートアップ企業の動きを、大企業も無視できなくなった事情が読み取れる。むしろ機を見るに敏な大企業は、率先してスタートアップを取り込もうとしているようだ。その動きが産業界の中でも最も強固な「ケイレツ」を成してきた自動車業界で起きていることも興味深い。
新陳代謝の速さを実感させる記事も多かった。かつて隆盛した期間限定・割り引きセールの「フラッシュセールが下火になったことを報じた4位の「すっかり廃れた『フラッシュセール』、景気低迷期のあだ花」があるかと思えば、「マットレス、スニーカー、食品、こんな領域にもスタートアップ」が5位にランクイン。新発想を事業化することをためらわないスタートアップの素早さが感じられる。
住宅も例外ではない。7位「注文住宅をネットで『編集』、不動産テックベンチャーのSuMiKaがタマホームと」を読むと、スマートフォン一つで自宅を買う未来も、そう遠くないかもと感じさせられる。