人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)といった最新のITを駆使して、新たなビジネスモデルを構築する動きである「xTech(クロステック)」。

 金融業界での「FinTech(フィンテック)」、小売業界での「RetailTech(リテールテック)」、医療業界の「MediTech(メディテック)」、農業の「AgriTech(アグリテック)」、教育の「EdTech(エドテック)」――。2016年はIT活用と縁遠かった様々な産業においてxTechが花開いた。

 アクセスランキングで1位となったのは、オーダースーツの世界におけるxTechを記者が体験した顛末を書いた「オーダースーツを爆買いする『鏡の中の私』」だった。紳士服専門店で国内シェアトップの青山商事が一部店舗に導入した、「バーチャルフィッティングアバターシステム」と呼ばれる仮想試着サービスを記者が試したところ、「実に新しく楽しい買い物体験」を得たという。

 「画面の向こうに映った自分そっくりの『鏡の中の私』が、気取ったスーツを自慢げに着て『ユー、買ってしまいなよ。もうすぐボーナスシーズンだし』とささやきかけるような幻想にとらわれた」。ついスーツを買ってしまいそうになったくだりに、xTechの生み出すエネルギーを感じる。

 ランキング2位に入ったのが、人材採用や人材配置配置など人事(HR:Human Resource)に関わるxTech「HRTech」の最新動向をまとめたITpro特集「人事はAIが決める──HRテック最前線」第4回の「人事部を『労務管理』から解放、複雑な手続きはAPIに任せろ」である。ITベンチャーのクフが手掛けるクラウドサービス「SmartHR」は、必要な従業員情報を入力すれば雇用保険や社会保険の加入手続きといった労務関係の申請書類の作成や役所への申請を自動的に実行する。

 バックエンドでは総務省が運営する行政情報のポータルサイト「e-Gov」で公開されている、電子申請用のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を利用する。SmartHRは社会保険労務士(社労士)ができる手続き業務の6割程度をカバーしている段階で、利用企業は既に1500社を超えているというから驚きだ。

 本特集の記事は、他にも5位に「最初の上司が新人の成長を決める、AIで分かった人材活用のポイント」が、7位に「『プロセス自動化は第一歩』、米HRテック大手が語る『タレマネ」』の勘所」がそれぞれランクインしている。

 ランキング3位にはxTechを初めて学ぶ人向けに分かりやすく解説した特集「xTech成功の鍵はAPIにあり」の初回「なぜxTechではAPIが鍵になるのか」が入った。豊富な事例でxTechの潮流を示しながら、ビジネスとビジネス、企業と企業を結ぶための「架け橋となっているのがAPI」と説き、xTechにおけるAPIの意義を強調している。

 本特集の記事も、6位に「4つの事例で見る、xTechでのAPI活用」が、8位に「xTechの潮流に乗るために必要なこと、提供側と利用側のAPI利用の注意点」がそれぞれランクインしている。

 ランキングの15位以下には「常識外れのスポーツメディア作れ 仕掛け人たちの深謀遠慮など、スポーツとITを掛け合わせる動きを追ったITpro特集「スポーツの常識をITでぶち壊せ」の記事が並ぶ。意外なxTechに驚くことだろう。

 xTechはどんどん実生活の身近に浸透しつつある。2017年もこうした動きが活発になりそうだ。

xTechのアクセスランキング
期間:2016年9月1日~12月11日
順位タイトル
1位オーダースーツを爆買いする「鏡の中の私」
2位人事部を「労務管理」から解放、複雑な手続きはAPIに任せろ
3位なぜxTechではAPIが鍵になるのか
4位ネスレ日本、異色のデジタル戦略 コーヒーマシンで紡ぐ家族の絆
5位最初の上司が新人の成長を決める、AIで分かった人材活用のポイント
6位4つの事例で見る、xTechでのAPI活用
7位「プロセス自動化は第一歩」、米HRテック大手が語る「タレマネ」の勘所
8位xTechの潮流に乗るために必要なこと、提供側と利用側のAPI利用の注意点
9位「HRテックで人事の典型的課題を解決」、日本オラクルが説明会
10位エン・ジャパンが採用サイト無料作成「engage」、求職者が求める情報に最適化
11位第一生命と日立、医療データを生命保険事業に活用する共同研究を開始
12位プラットフォームの力で都市問題を解決、米Uber取締役が東京で講演
13位Facebook上でユーザー同士が物を売買できる「Marketplace」、米英など4カ国で開始
14位コーリジャパン、AI応用の法人向けオンライン英語学習プログラムを本格販売
15位常識外れのスポーツメディア作れ 仕掛け人たちの深謀遠慮
16位大宮アルディージャが挑む「スマートスタジアム」大作戦
17位青山学院はなぜ箱根駅伝を連覇できたのか 原監督の哲学
18位ハイテクスポーツ中継に大興奮 電通とパナ、東京五輪で世界を驚かす
19位データ主義を磨く日本野球機構 28年ぶりのシステム刷新
20位独サッカー代表、躍動の裏にデータ分析あり SAPの流儀とは