記者が「シリコンバレー支局」で活動を開始して1年半が経過した。この地は物価が非常に高く、暮らしは楽とは言いがたいが、新しもの好きの記者にとっては楽しい場所でもある。未来のライフスタイルを“今”、体験できるからだ。シリコンバレーの「未来生活」を紹介しよう。

 まずは「シリコンバレー」がどんな場所か、おさらいをしておこう。記者のオフィスはパロアルトにあり、アパートは米Appleの本社があるクパチーノに借りているが、この地を一言で言い表すと「田舎」である。

 車がなければ買い物も外食もできないし、夜は真っ暗で星空が美しい。自宅の周りにはリスがいつも走り回っているし、アパートの敷地内でアライグマのような生き物を見かけたことすらある。

 我が家のあるクパチーノから車で1時間30分ほど南に行くと、そこには大自然が広がっている。記者が大好きなのはモントレーという景勝地だ(写真1)。米Hewlett Packardの創業家が設立した豪華な水族館があり、そこではラッコの泳ぐ水槽が名物になっているが(写真2)、実はラッコは水族館の外の海にも普通に泳いでいたりする(写真3)。野生のラッコに出会えるのがシリコンバレーだ。本当に田舎だ。

写真1●記者が愛してやまないモントレー
写真1●記者が愛してやまないモントレー
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写真2●施設の整ったモントレー水族館
写真2●施設の整ったモントレー水族館
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写真3●海を泳ぐ野生のラッコ
写真3●海を泳ぐ野生のラッコ
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 田舎だけに生活環境は良好だ。週末には至る所で「ファーマーズマーケット」が開かれ、新鮮なオーガニック野菜や果物が購入できる(写真4、5)。驚いたのはここで買ったトウモロコシの甘さ。採れたてのトウモロコシは果物のように甘く、翌日になるとその甘さが一気に減ってしまう。東京では知ることのなかった味覚だ。

写真4●マウンテンビュー駅前のファーマーズマーケット
写真4●マウンテンビュー駅前のファーマーズマーケット
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写真5●オーガニック野菜を扱うファーマーズマーケットの店舗
写真5●オーガニック野菜を扱うファーマーズマーケットの店舗
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 そんな田舎のシリコンバレーだが、ライフスタイルはとても未来的だ。数多くのIT企業やスタートアップ、製造業などがシリコンバレーを「実験場」に選び、様々なアイデアをここで試そうとしているためだ。記者が実際に体験した製品やサービスがどのようなものか。「架空の1日」風にまとめてみたので、ぜひ追体験して頂きたい。

7am:車の鍵が見当たらなくても大丈夫

 ある日の朝7時。サンフランシスコに取材に出かけようとしたところ、自動車の鍵が見当たらないことに気付いた。

 そんな時でも大丈夫。自動車の鍵には「Tile(タイル)」が付けてあるからだ(写真6、7)。これはあらゆるモノで「iPhoneを探す」が実現できるデバイスだ。スマートフォンとBluetoothで通信し、スマホのGPS機能と連動して、Tileがある場所のデータを常時記録する。そのためスマホアプリからは、Tileの場所をいつでも確認できる。近くにあるのに見当たらない場合は、アプリの「Fined(探す)」ボタンをタップすると音が鳴るので、どこにあるかが分かる仕組みだ。

写真6●自動車の鍵に取り付けた「Tile」
写真6●自動車の鍵に取り付けた「Tile」
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写真7●Tileのスマホアプリ
写真7●Tileのスマホアプリ
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