[アクセススイッチ]パソコンなどをまとめてネットワークへと導く

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 アクセススイッチはパソコンなどの端末をネットワークに接続するための機器だ。ツイストペアケーブルのイーサネットで、複数のコンピュータを接続する装置として最初に登場したのがリピーターハブだ。リピーターハブは入ってきた通信をすべての接続ポートに転送する。リピーターハブでは、実際に必要とされる通信の何倍もの通信が発生してしまう。

 現在は利用効率を改善したL2スイッチがアクセススイッチとして使われる。パソコンのネットワーク端子など、イーサネット接続端子ごとに付与されるMACアドレスを参照して、相手が接続されたポートだけにデータを送る(図6-1)。

図6-1●リピーターハブとスイッチの違い
図6-1●リピーターハブとスイッチの違い
スイッチが登場する以前は、リピーターハブが用いられていた。リピーターハブは接続したポートすべてで同じパケットが流れる。このため、不要なパケットがすべてのポートに配信されてしまい、通信の効率が低下する。スイッチは宛先のMACアドレスを学習後、必要なポートのみにパケットを流す。不要なポートにパケットが流れないので効率が上がる。
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 企業などで使うアクセススイッチは、ある程度以上の接続ポート数と、安定動作が求められる。家庭向けのL2スイッチと比べると、管理機能や性能が強化されている。企業向け製品では100M~1Gビット/秒の接続ポートを8~48個備えている。上流のディストリビューションスイッチへ接続するために高速な1Gビット/秒の接続ポートを2~4個備えているスイッチが多い。

状況を把握できる管理機能

 障害発生時に原因を迅速に特定したり、障害発生そのものを未然に防ぐため、アクセススイッチにもSNMPなどを通じた管理機能が用意されている

 トラブル回避の機能も備えている。STPというプロトコルで、トラブルを検知すると一部のリンクを切断し、特定のスイッチを中心として経路がループしない木(Tree)を構成する。

 STPが防ぐトラブルは「ループ」である。ループは、文字通りネットワークの接続が環状になってしまったときに発生する。イーサネットでは接続相手のMACアドレスが分からない場合、全員宛てに通信(ブロードキャスト)して問い合わせる。接続が環状になっていると、この問い合わせが延々と続いてしまい、ネットワークをパンクさせてしまう。

 意図的にループ状の構成にしておき、STPを使ってこれを解消させる場合もある。障害が発生した際に再度STPを動作させれば、残った回線部分だけで通信を継続できるからだ。ただしルートとなるスイッチからのSTP情報を待つため、60秒程度の通信遮断が発生する。

▼ツイストペアケーブル
より対線のこと。イーサネットはこの種のケーブルを使うようになって普及した。
▼リピーターハブ
単純に「ハブ」とも呼ぶ。
▼L2スイッチ
スイッチングハブと呼ぶこともある。
▼SNMP
Simple Network Management Protocolの略。ネットワーク監視およびネットワーク管理を行うためのプロトコル。
▼用意されている
管理者がスイッチの状況を知る機能を備えたスイッチを「インテリジェントスイッチ」とも呼ぶ。なお個人で使用するスイッチには、こうした管理機能がないスイッチが多く使われている。
▼STP
Spanning Tree Protocolの略。優先順位などの設定でルートとなるスイッチを選び、ループ構成になっている一端を遮断してループを回避する。
▼60秒程度
この時間を短くする方法として、構成変更のきっかけとなったスイッチが自発的にSTPパケットを送出するRSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)などを使う。