評価や勤怠など、基本的な人事データを分析するだけでも意外な事実が見えてくる。JALは女性活躍の推進や長時間残業の撲滅にその結果を生かした。

 JAL人財本部では研究会参加前の2011年から基本人事情報や入社時の適性検査結果、キャリアパスの希望などの広範な人事関連情報を統合管理する取り組みを進めている。

 2013年には女性活躍を推進するため、業務企画職の社員の人事データを分析。同年入社の男性社員と女性社員の入社時適正検査の結果や配置や評価、昇格などを比較した。すると入社時の能力には差がないが、配置や評価で徐々に男女間の差が拡大していたことが明らかになった。

図1●JALは過去の人事データを分析、女性の活躍が停滞する原因を分析
図1●JALは過去の人事データを分析、女性の活躍が停滞する原因を分析
出典:リクルートマネジメントソリューションズ【従業員満足度調査ESサーベイ2】
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 こうした実態をデータで裏付けて経営層とも問題意識を共有。人財本部は「異動配置」「育成・ジョブアサイン」「評価」の3分野で速やかに改善のアクションに動いた。

 その1つとして、女性社員が担当している業務内容を、人財本部のメンバーが定期的に所属長から聞き取っている。達成感が高く、自分の成長が感じられる仕事をアサインされているかを確認するようにした。

 また女性社員の働きやすさを支援する施策も整理。「育児休暇や時短勤務など、無理なく働くための“ケア施策”が充実している一方で、効率よく働き成果を出すことを支援する“フェア施策”については拡充の余地があることが分かった」(人財本部人事部ワークスタイル変革推進室の久芳くば珠子アシスタントマネジャー)。そこでフェア施策としてテレワーク環境の整備などを実施。この結果、2015年度に実施したES(従業員満足度)調査では、30代女性社員の満足度が大幅に向上した。

 人事データ分析では、残業時間が10時間を超えて長時間になるほど、高い評価を得やすいという一定の相関があった。そこで残業時間を評価に反映させないよう管理職を指導。本社間接部門では残業削減の改善活動に着手し、半年後には残業時間が2割減る成果を得た。2017年度末までに総労働時間1850時間を目指す。

図2●以前の評価は、残業時間と一定の相関があることを証明。残業削減に取り組んだ
図2●以前の評価は、残業時間と一定の相関があることを証明。残業削減に取り組んだ
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「辞めそうな人」を予測

 人事関連の情報を統合管理し、分析まで行うクラウドサービスも登場している。

 SUSQUE(サスケ、東京・渋谷)が提供するクラウド型人事・労務分析ツール「サブロク」は、勤怠や評価などのデータを人事システムから取り込むほか、社員にアセスメントやアンケートを実施し、その結果も統合管理する。これらのデータを機械学習し、「優秀人材」や「イノベーター」などになる可能性の高い人材を抽出する機能を持つ。

 社員の退職可能性も同様に機械学習で判定。出退勤時間の変化や残業時間の増減、有給休暇の取得回数の状況などから、個々の従業員の4~5カ月後の退職確率を予測する。

 コーナーストーンオンデマンドジャパン(東京・港)が提供するクラウド型のタレントマネジメントシステムでは、人事ビッグデータを解析し、特定職位の後継者に誰がふさわしいかを予測する機能を提供。部門や拠点をまたいだ人材配置や人材の抜てきを支援する。