強みは企業理念というが、それを下支えするものがなければならない。それは何か。そしてNTTデータが抱える課題は何か。

(聞き手は戸川 尚樹=ITpro編集長、編集は高槻 芳=日経コンピュータ)


企業理念が強みとのことです。でも、「理念だけではビジネスはできない。きれいごとではないか」という少し意地悪な質問に対してはどう答えますか。

 もちろん理念だけでなく、それを下支えするものがないとお話になりません。その点については相当の強みを持っているからこそ、理念の話をしたわけです。下支えする部分の強化については、ソフトウエアの生産技術力の向上と「リ・マーケティング」という二つの観点で取り組んでいます。

 ソフトウエアの生産技術の分野では、当社はトップを走らなければいけないと思っています。具体的には、ウオーターフォール方式やアジャイル型についての開発方法論や開発技術、支援ツールなどについて研究し、これらの分野で先頭を走るということです。

(撮影:村田 和聡、以下同じ)
(撮影:村田 和聡、以下同じ)
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 3年ぐらいかけて、グローバル共通の開発方法論「NTTデータ・スタンダード・メソドロジー」を完成させたのも、ソフトウエア生産技術力を高めるためです。開発生産性をグローバル全体で高めるため、開発手法やツール、用語などを統一していきます。もちろん日本で作成した開発標準を世界に押し付けるという考え方ではなく、海外拠点で使ってみて合う・合わないを検証しながら、適宜改良していきます。

もう一つの「リ・マーケティング」とは、再度マーケティングするということですか。

 ザッツ・ライト。一度は断られたり、競合が食い込んでいると思っている顧客企業に対して、もう一度、提案しに行くという活動です。「あの会社は某大手IT企業が入り込んでいるから無理だ」という考え方を捨てて、再度、提案に行く。

 時間がたてば顧客企業の事情は変わるものです。顧客企業先で合併があったり、機構改革があったり、人事で責任者が変わったりと、状況は変化します。今お付き合いしているIT企業に対して不満を持っている可能性だってあります。以前と異なるテーマで提案したら、気に入ってもらえるかもしれません。いずれにせよ、「以前に提案して受注できなかった」を言い訳にせず、何度でもトライしましょうと。このリ・マーケティングは、私が社長に就任してから4年間ぐらい力を入れている取り組みで、国内で着実に成果を上げています。海外ではリ・マーケティングといっても通じないので、「ゲームチェンジ」という言葉を使って、顧客とのリレーション強化を進めてもらっています。