SAPジャパン・福田譲社長のインタビューの最終回。ERP事業以外の分野を着実に伸ばすなど変革の成果を上げているSAP。だが課題はある。一体何か。

(聞き手は戸川 尚樹=ITpro編集長、編集は山崎 洋一=日経コンピュータ)


変革の成果が出ていて業績が好調。とはいえ、課題はあるはずです。SAPジャパンの課題は何ですか。

 一つは、我々自身の変化対応能力をもっと迅速に高めなければならないという点です。「新たな人材が加わり、変わってきた」と話しましたが、既存の社員のほうがまだ多く、いろいろとスピーディーに変えていかなければなりません。

(撮影:陶山 勉、以下同じ)
(撮影:陶山 勉、以下同じ)
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 二つめは、SAPジャパンの従業員の国際化。SAPは基本的に、どの拠点に入社しても世界統一の人事システムの枠組みのなかで自由に異動することが可能です。日本法人から海外法人への異動希望を自由に出せるわけです。自分の部下が上司に内緒で異動希望を出し、仮に希望先がオーケーした場合、上司は部下の異動を引き止めることはできません。

応募者も合格者も少ない

 「グローバルで働きたい人は、どんどん応募しなさい」と海外拠点で働くよう従業員には常々勧めています。SAPジャパンのメンバーは世界的に見ても優秀で十分やれると思うからです。そうしてキャリアを自ら切り開いてほしいと願っています。

 ところがまずもって応募者数が少ないのです。2015年、海外拠点で働きたいと応募したのは20人強でした。引っ込み思案なのか、自分のキャリアパスへの関心が薄いのか、理由はちょっと分かりませんが(苦笑)。応募者数が少ないことに加え、応募したとしても面接で落ちてしまう。

優秀であるはずなのに、なかなか合格しないのはなぜですか。

 理由の一つとしては、多様性に対する理解が不足していることが挙げられると思います。さらに、ほかの人にはない自分のバリューを認識して、それを表現する力が乏しいのだろうと思います。

 日本人は協調性については優れています。その点を保ったまま、グローバル化に順応し、自分の競争力を高めていくことが大事だと思います。

 私の場合、外国人に混ざって英語で対話する場合、人格を変えるようにしています。そうしないと、自分の言いたいことをきっちりと主張できないからです。そのやり方で、日本人と議論したら、相手から単なる「変な人」と見られてしまうでしょう。自分がそうしているので思うのですが、仕事では、違う人格を両立させることはできるでしょう。