「ERP一本槍の企業だったが、最近は“非ERP事業”を急速に成長させている」と富士通の幹部が注目するなど、事業構造改革を続けている欧州SAP。独アディダスや米UPSなどの大手顧客企業に対して、新しいデジタルサービスの実現を支援する事業を拡大させている。日本市場はどうか。SAPジャパンの福田譲代表取締役社長に、強みや課題などについて聞いた。
SAPジャパンの2015年度(2015年1~12月)の売上高は、前年比6%増の6億3600万ユーロ(1ユーロ122円換算で776億円)でした。2016年度の業績の見通しは。
具体的な数字は言えませんが、極めて堅調です。ワールドワイドと同様に、順調だということです。
特にクラウドサービス分野の成長率は、マーケットの期待値どおりか、それ以上です。グローバルの中期経営計画では、2018年にはクラウドサービスのビジネスの規模が、ERPパッケージのライセンス販売ビジネスを超えるとしています。
ただし日本法人がグローバルの業績と違う点が二つあります。一つは、ERPパッケージのライセンス販売収入が2ケタ成長を遂げていること。もう一つは、クラウドサービス事業の元の規模が小さいこともあって、3ケタの成長を続けていることです。
SAPジャパンの中期経営計画では、クラウドサービスの売り上げがERPパッケージのライセンス販売の売り上げを逆転するのは2020年としています。2年遅れでグローバルと同じレベルにいくのは、悪くないペースだと思っています。
現在のSAPジャパンの強みは何ですか。
「3セット」「人」「グローバル」です。3セットとは、物事を変えるために不可欠なツールセット、スキルセット、マインドセットのことです。
ツールセットとは、世界最大のソフトウエア群を持っているということです。人間の英知を結集したソフトを世界一数多く持っていて、それを提供できているのが当社だと自負しています。
スキルセットとは、デザイン思考を備えた人材を抱えているということです。当社は多額を投じて、デザイン思考を全社に導入し、それを全社員が身に付けたことは非常に大きなアドバンテージだと考えています。