日本オラクルの業績は好調だ。2016年5月期の売上高は1702億円、営業利益は502億円と6期連続の増収、5期連続の増益を達成。データベース製品を中核に成長を続ける同社だが、転換期を迎えている。2014年4月に日本オラクル社長に就任した杉原博茂 代表執行役社長 兼 CEO(最高経営責任者)は、「2020年には、『クラウドといえばオラクル』と言われるようにする」と公言しているものの、現在の日本オラクルのクラウド関連の売上高比率は約2.7%である。どのようにしてクラウドカンパニーに変身させるのか。杉原社長に聞いた。

(聞き手は戸川 尚樹=ITpro編集長、編集は島田 優子=日経SYSTEMS)


「2020年にクラウドでナンバーワン」を目標に掲げています。現状のクラウド関連事業をどう見ていますか。

 2017年5月期第1四半期(2016年6月~8月)の売上高と利益は、ともに過去最高でした。なおかつクラウド関連の売上高は前年比で84%増加し、米国本社の成長率を上回っています。これをもっと加速させて、ダントツでやっていかないとだめだな、と気を引き締めています。

日本オラクル 代表執行役社長 兼 CEO(最高経営責任者) 杉原博茂氏
日本オラクル 代表執行役社長 兼 CEO(最高経営責任者) 杉原博茂氏
インターテル、EMCジャパン、シスコシステムズなどで通信関連ビジネス責任者を歴任。2010年3月、日本ヒューレット・パッカード(当時)に入社。常務執行役員 エンタープライズグループでエンタープライズインフラストラクチャー事業統括に就任。2013年10月、米オラクルに入社し、シニア・バイスプレジデント グローバル事業統括。2014年4月に日本オラクル代表執行役社長兼CEOに就任し、2014年8月から現職 (撮影:陶山 勉、以下同じ)
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伸びているとはいえ、クラウド関連は連結売上高1702億円に対して46億円です。ビジネス規模は小さいと思うのですが。

 はい。まだ、小さいですね。ただ我々としては、2020~2025年くらいには、企業向けIT市場の70~75%がクラウド関連になると見ています。当社として明確な数値目標は持っていませんが、やはりそれぐらいを目指せればいいなと。

 米オラクルのCEOであるマーク・ハードは、2016年9月に米国で開催した弊社のイベント「Oracle OpenWorld」で、「2025年にはIT予算の80%がクラウドに費やされる」と指摘しました。さらに2016年10月に東京で開催した「Oracle Cloud Days」というイベント内の講演では、GEデジタルが「2020年にはシステムの約7割をクラウドに移行する」と言っています。

“三種の神器”で怒涛の攻めに

 ただし「何が何でもクラウドで」と言いたいわけではありません。顧客のシステム化の事情を見極めながら、きっちりと提案していきます。顧客企業の全てが、クラウドに移行するわけではありませんから。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)とIaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)はパブリッククラウドで実現、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)はハイブリッド型を採用など、顧客によって最適なクラウドの活用方法は異なります。

 そうした中で、オンプレミスは顧客の選択肢の一つとして残ります。これまで通り、我々の強みであるオンプレミスのビジネスについては、当然ながらサポートし続けます。そのうえで、クラウドとのハイブリッド構成のシステムを提供できることが当社の強みです。

 オンプレミスやクラウドなどの選択肢を顧客に提示し、最適な製品・サービスを選んでいただく。そうして最終的には、クラウドの分野でナンバーワンになることが目標です。これは経営ビジョン「VISION 2020」でも示しています。今後、「データベース・アズ・ア・サービス」という分野ではおそらく1番になるでしょう。「ミドルウエア・アズ・ア・サービス」「Java・アズ・ア・サービス」などでも1番になると考えています。

 VISION 2020は、私が就任した2014年から6年間の道筋を示したものなんですね。最初の3年でまずSaaSを発表しました。次がPaaS。2016年には、会長であるラリー・エリソンが自らIaaSを発表しました。

 これらによって、クラウド事業を推進するための“三種の神器”が整いました。弊社の組織や、パートナーのエコシステムもある程度見えています。これから、クラウドでナンバーワンになるため、怒涛の攻めに出て行きます。