米シスコシステムズの直近の業績は好調とはいえない。同社の2016年11月~2017年1月期の売上高は、前年同期比2%減となる115億8000万ドル(1兆3210億円)、純利益は25%減の23億4800万ドル。一方、シスコ日本法人の業績は「堅調」と鈴木みゆき社長は言い切る。日本法人成長の要因は?

(聞き手は戸川 尚樹=ITpro編集長、編集は堀内 かほり=日経NETWORK)


シスコ日本法人の業績はどのような状況ですか。

 具体的な数字は言えませんが、日本は非常に順調です。ここ数年、日本独自の戦略に取り組んできました。この成果が出てきておりまして、満足しています。

シスコシステムズ 代表執行役員社長 鈴木 みゆき氏
シスコシステムズ 代表執行役員社長 鈴木 みゆき氏
オックスフォード大学卒業。1982年、ロイター入社。2002年、日本テレコム(現ソフトバンク)専務執行役員兼コンシューマー事業本部長を務める。2007年、KVHの代表取締役社長兼CEOおよび代表取締役副会長、2011年、格安航空会社 (LCC) ジェットスター ジャパンの代表取締役社長を経て、2015年、シスコシステムズ代表執行役員社長に就任。5歳からオーストラリア、イギリス、イタリアで過ごすなど海外での生活が長い。(撮影=陶山 勉、以下同じ)
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 2015年にシスコに入って強く感じたことは、日本のお客様にもっと利用しやすい製品、サービス、サポートシステムを提供していく必要があるということでした。それまでシスコはグローバル企業として欧米中心の製品やサービスを展開し、伸ばしてきましたが、それだけでは足りないと感じました。

 そこで米国本社に、「グローバルサービスをそのまま日本で展開することは基本的に困難だ」ということを何度も伝えました。議論を繰り返して理解を得ながら、日本独自のやり方を進めてきたわけです。

日本独自サービスの代表例は、中小企業向けの「Cisco Start」ですか。

 はい。2015年10月に開始したCisco Startは、ルーターやスイッチ、無線LAN機器などの製品を中小企業向けに手ごろな価格帯で提供しています。特徴は、マニュアルやポータルサイト、サポートサービスなどの言語をすべて日本語化していることです。本当のローカリゼーションを進めて実現しているサービスで、過去に前例がありませんでした。

シスコの知名度、地方では低かった

 とにかくシスコは、地方の中小企業や教育機関、病院などには、ほとんど認知されていませんでした。過去に2~3回、中小市場の攻略にトライしていますが、結果を出せず、断念しているのです。それが今回は違い、手ごたえがあります。

 Cisco Startを通じて、中小企業や地方でシスコの知名度は上がってきています。Cisco Starは提供を開始して以来、年率30%以上のペースで成長しています。