国内のセキュリティ人材の不足が深刻とされるなか、優秀なセキュリティ人材を育成してきたのがラック次期社長の西本逸郎氏だ。ところが、ラックのタレントが他社に引き抜かれるなど流出している。現状を西本氏はどう見ているのか。

(聞き手は戸川 尚樹=ITpro編集長、編集は齊藤 貴之=日経NETWORK)


ラックの課題は何でしょうか。

 会社の規模が小さいことです。従業員数が1700人で2000人に満たないですし、営業利益は25億円ぐらいです。もう少し売り上げや営業利益を増やさないと、思い切った投資が難しい。株主からみても、安心して当社に投資できないというのが実情だと見ています。

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 人員を増やすためには、通常の採用とM&A(合併・買収)の両方が必要だと思っています。ただし優秀な人材を容易に確保できるほど、セキュリティ産業は大きくないのです。例えば「CISSP」という国際的に有名なセキュリティ資格を保持している人材は、米国で3万人以上いるのに対して、国内は1500人ぐらいしかいません。

 日本では、ようやく独自のセキュリティ資格「情報処理安全確保支援士」の制度が始まります。ラックでは100~200人といった単位でこの資格を取得させますし、維持する費用は会社で負担します。しかし国内全体で、情報処理安全確保支援士に登録した人数は数千人。政府が言っている万人単位には届きません。国内では引き合いが強いものの、セキュリティ人材はまだ非常に少ないのです。

 少し生意気な言い方になるかもしれませんが、我々はセキュリティ企業のリーダーとして、セキュリティ分野の人材育成や採用を積極的に進めます。採用した人材がすぐに活躍できるようなキャリアパスも整えていきます。