「○○ドリンクを全面リニューアル!」。新商品の開発に当たり、「現行商品より魅力があるか」を確認するため、商品評価テストを行うメーカーは多いはずです。今回は「商品評価テストの比較」について考えてみましょう。  

 30人の評価者それぞれに、飲料カテゴリーのある現行商品とその新商品の両方を、10段階で評価してもらった、というケースを想定します。その後、商品評価それぞれの平均値を導き出して比較。すると「新商品に対する評価の平均値が現行商品より高い」という結果が出ました。

 ですが、この結果の通り「新商品と現行商品で評価の平均値に差がある」とはすぐには言えない問題点を挙げました。その1つが、評価者30人がたまたま選定された人たちであること。もし別の30人に評価してもらったら、新商品と現行商品それぞれの評価結果の平均値が変わる可能性があるのです。そこでそれぞれの平均値に誤差があることを前提に、「差がある」と言えるかどうかを見極めなくてはいけません。

 今回も第1回と同様、一部のデータ(サンプルデータ)で評価していることもあり、有意確率による評価が可能な「検定」という手法を用いる必要があります。そこで、以上のような問題などをクリアする検定の手法として、2つのグループの平均値を比較する「t-検定」が有効です。この手法で「新商品の方が現行商品より評価が高い」と言ったときに、どれくらいの誤判断リスクがあるかかが判断できるようになるわけです。

 ビジネスで結果を用いる場合には、単に「統計的に差があると言えるのかどうか」をみるだけではなく、「実務上意味のある差と言えるか」についても、検討する必要があります。

 それではここから、t-検定を使った分析方法を詳しく見ていきましょう。今回、取り上げるのは「1人の評価者が両方の商品を評価する」という場合に適用する手法である「t検定:一対の標本による平均の検定」です。この名前は、表計算ソフトのエクセルに組み込まれている分析ツールのものと同じにしています。エクセルを駆使してどうデータを分析していくのかを、これからできるだけ詳細に解説していきます。

 まずは、図1のようなデータを用意します。30人が現行商品と新商品をそれぞれ評価したデータです。図1は一部を省略していますが、実際には30行×2列のデータです。実際のエクセルシートはここで入手できます。

図1●商品評価データの概要
図1●商品評価データの概要
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 ここで用意したデータは、それぞれの商品を10点満点で評価した量的データです。評価者30人が一人ひとり、現行商品と新商品の両方を評価しているので、同じ行に「対」として入力されています。

 エクセルの分析ツールを用いて、対のデータについての平均値を検定するには、このデータの形のままでよいのですが、分析手法をイメージしやすくするため、図2のように「新商品と現行商品の差」を計算したものを追加しておきましょう。なお、ここで公開しているエクセルシートでは、この欄は追加済みです。

図2●評価差を計算した項目を追加した商品評価データ
図2●評価差を計算した項目を追加した商品評価データ
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 一対のデータによって、平均値に差があると言えるかどうかを考えるには、まず図2の「評価差」について平均を計算します。そしてその値が「0ではないと言えるか」を検討していくことになります。

 もし、評価差の平均が0であれば、全体として「現行商品と新商品に差がない」という結論になるはずです。誌面でも解説していますが、対のデータですので、単に現行商品と新商品の平均を比較するというのでは、適切ではありません。