米マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」には2016年11月25日現在、ユーザーにとって仮想マシンやストレージなどリソースの管理画面となる「ポータル」が新旧二つある。加えて、Azureのクラウドサービスの基盤である「デプロイメントモデル」(以下、デプロイモデル)も、新旧の2種類が存在する。
Azureは今、いわばバージョンアップの過渡期。旧ポータルと旧デプロイモデルを使ってきたユーザーは、遅かれ早かれ、どちらも新バージョンに移行する必要に迫られる。さらに複雑なことに、場合によっては当面の間、ポータルとデプロイモデルそれぞれの新旧バージョンを使い分けなければならない。旧ポータルや旧デプロイモデルでしかできないことがあるからだ。
問題なのは、新旧のポータル/デプロイモデルの存在と両者の違いが、Azureユーザーの間で十分に認知されておらず、一部で混乱を招いていることである。Azureが急激な進化を遂げているがゆえのバージョンアップ問題であり、うまく乗り越えてほしいと考えている。
そこでこの特集では、まず新旧のポータルとデプロイモデルが併存する状況に至った経緯を解説する。そのうえで次回から、それぞれの実用上の差異や移行にあたっての留意点などを取り上げる。
2014年4月に新ポータル/デプロイモデルが登場
改めて、新旧のポータルとデプロイモデルを説明する。
Azureの進化の早さは、表を見ればお分かりいただけるだろう。
時期 | 内容 | 詳細 | ポータル の世代 | 利用できるデプロイモデル |
---|---|---|---|---|
2008年 10月 | PDC 2008にて「Windows Azure」を発表、プレビュー提供開始 | ―― | 第1世代 | ASM |
2010年 11月 | Silverlightベースの管理ポータルが登場。名称が「Management Portal」となった | ―― | 第2世代 | ASM |
2012年 6月 | 2012年6月には、クラシックポータル(当時のプレビューポータル)がリリース。このときのリリースでは「Windows Azure Management Portal」と呼ばれている | 仮想マシンや仮想ネットワークといったIaaS系のサービスを始め、多数の新機能や機能のエンハンスが発表された。Web Apps(当時のWeb Sites)が発表されたのもこのタイミング | 第3世代 | ASM |
2014年 2月 | 日本データセンター開設 | 東日本、西日本の両データセンターが稼働開始 | 第3世代 | ASM |
2014年 3月 | 「Windows Azure」から「Microsoft Azure」への名称変更 | OSSプロダクトサポートの充実などを受けた戦略的なブランド変更 | 第3世代 | ASM |
2014年 4月 | 「Build」にてAzureポータル(現行のポータル)のプレビューが開始された | ARMの概念が導入された | 第4世代 | ASM、ARM |
2014年 9月 | Silverlightベースの管理ポータル(https://windows.azure.com)の提供が終了 | 全ての機能が当時の管理ポータルに実装されてから1年程度の猶予が設けられた | 第4世代 | ASM、ARM |
2015年 12月 | 新しいAzureポータルが一般提供(GA)となり、それまでのポータルが「クラシックポータル」となった | これ以降、Azure公式サイトからポータルへのリンク先が、新しいAzureポータルに変更され、クラシックポータル内にも新しいポータルへのリンクが張られるようになった | 第5世代 | ASM、ARM |