企業の拠点間をつないだり、インターネットへ接続したりするための通信回線として使われてきたISDN(サービス総合ディジタル網)がサービスを終える。NTTが固定電話のバックボーンであるPSTN(公衆交換電話網)を、2025年までにIP網に切り替えるためだ。これに伴い、PSTN上で提供されているISDNのデータ通信も2020年度後半以降にサービスを終了する予定である。

 ブロードバンド回線が当たり前の今、まだISDNが使われているのかと疑問に思うかもしれない。総務省の統計では、2015年12月末時点での契約数は343万9000(図1)。今も多くのユーザーがISDNを利用しているのだ。

図1●ISDNサービスの契約数の推移
図1●ISDNサービスの契約数の推移
NTTは1988年4月、ISDNサービス「INSネット64」の提供を開始した。グラフは総務省の統計の数値で、NTT以外が提供するISDNサービスを含む。ISDNは安価なターミナルアダプターが発売されるなどしてユーザーが増え、2001年にピークを迎えた。その後ブロードバンド回線の登場によりユーザーが減少し、2015年12月末時点で343万9000契約となっている。NTTのISDNのデータ通信サービス「INSネット ディジタル通信モード」は約15万回線ほど利用されている。
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 ISDNがどのように使われているのかを調べてみると、サービス終了で、多くの業界に影響があることがわかった。

通話とデータ通信を同じ網で実現

 まずはISDNの基本をおさらいしよう。

 ISDNは、1契約で音声通話とデータ通信の両方を利用できるサービスである(図2)。1988年4月にNTTが「INSネット64」という名称で開始した。NTT東日本によると、NTTのINSネットサービスの契約数は2015年12月末時点で約256万回線。このうち15万回線程度がデータ通信に使われているという。

図2●音声とデータを同時にやり取りできるサービス
図2●音声とデータを同時にやり取りできるサービス
ISDNはIntegrated Services Digital Networkの略で、サービス総合ディジタル網のこと。音声や画像、動画など様々な情報を一つの網でやり取りできるのが特徴。開始当時としては、現在のインターネットのような通信基盤を目指した次世代のサービスだった。
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▼ISDN
Integrated Services Digital Networkの略。
▼NTT
PSTNをIP網へ切り替える取り組みは、持株会社であるNTTとNTT東日本、NTT西日本が連携して進めている。ここでは3社をまとめてNTTと表記している。
▼PSTN
Public Switched Telephone Networkの略。
▼IP
Internet Protocolの略。イーサネットなどが含まれるデータリンク層より上位のネットワーク層に属す。ここでやり取りされるデータの単位をIPパケットという。
▼データ通信
ISDNの電話については2025年以降も当面利用可能。第3回で詳述。
▼約256万回線
図1の総務省の統計にはNTT以外が提供するISDNサービスも含まれる。
▼15万回線程度
2014年4月~2015年8月にNTTが料金を請求したデータ通信をしている回線数。データ通信は「INSネットディジタル通信モード」というサービス名で提供している。同社のISDNユーザーなら誰でも利用できる。申し込みは不要。