ITエンジニアのステップアップの方法は様々だ。ステップアップというと転職が真っ先に思い浮かぶが、同じ会社にいながら自らの価値を磨くITエンジニアもいる。

 「技術系のコンサルティング経験に加え、ビジネス系の知識を得ることでより広い視野を持つコンサルタントになりたい」。こう考え、フルタイムで働きながら経営学の大学院に進学したのが、ウルシステムズでシニアコンサルタントを務める小笠原 記子氏だ。小笠原氏は2児の母でもある。

写真●ウルシステムズの小笠原 記子氏
写真●ウルシステムズの小笠原 記子氏
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 小笠原氏が大学院へ通学したのは第2子の育児休暇から復帰した1年後だった。1人目の育児休暇から復帰した小笠原氏は、「すき間時間に仕事をするなど、自分では頑張っていたもののの思うように成長できない」という状況を経験する。

 第2子の育休明け後に「転職する代わりに勉強をすることで、ステップアップする」との考えから社会人向けの大学院であるK.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院に入学した。

 「大学院に通うメリットはやりたいことを見つけて、一つの研究に1年間、継続的に没頭できること」と小笠原氏は話す。コンサルタントはプロジェクトごとに担当する企業が替わり、じっくりと一つの問題に取り組む経験をしにくい。

 加えて、「IT以外の事業会社から通学している人と一緒に学習することで、さまざまな業界の事情を知ることができて、コンサルタントとしての視野も広がった」という。

 小笠原氏は現在、ウルシステムズでコンサルタントを務める一方で、大学院で研究した子ども向けプログラミング学習の手法である「探究型プログラミング」の事業化も進めている。休日には磁石で電子回路をつないで電子工作ができる「littleBits」を利用して小学生向けの講座を開催する。

 小笠原氏は、「何もないところから新たな事業を作り出す経験は、問題解決が主のITエンジニアとは異なる。試行錯誤しながらビジネスを作っていくことは新たなスキルアップにつながっている」と話す。