「ITエンジニアはほかの人より得意なことがないとダメ。一方で裾野が広くないと、ほかの人の持つ技術力を正しく評価できない。この考えのもと、エンジニアとしての腕を磨いている」。

 こう話すのはトレジャーデータでログ収集ツール「Fluentd」を含む各種OSS(オープンソースソフトウエア)の開発を手掛ける田籠(たごもり)聡氏だ。OSS関連のコミュニティーでは「モリス」という名前で活躍し、Twitterのアカウント(@tagomoris)には約5700人のフォロワーがいる有名人だ。

写真●トレジャーデーターの田籠聡氏
写真●トレジャーデーターの田籠聡氏
〈写真:小野さやか〉
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 田籠氏のITエンジニアとしてのスタートは、ISP(インターネットサービスプロバイダー)での社内システムの開発だった。就職後1年で、NTTデータ先端技術に転じる。インフラ系のプロジェクトを担当し、「プロマネやプリセールスなどをしていたものの、コードを書く機会はなかった」。

 そんな田籠氏が、コードを書く開発者に転身したのは、趣味で米GoogleのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)である「Google App Engine(GAE)」を使った開発を始めたことがきっかけだった。「30歳を前に『コードを書く仕事に就くなら最後のチャンス』と考えて始めた」と、田籠氏は当時を振り返る。