会議は人材育成の場にもなる。若手社員は人の意見を聞き、自分が何を言うかを考える過程で視野が広がり成長する。会議で発言しない社員がいたら、「やる気がないのか」と怒る前に、まず自分を振り返ってみよう。最終回は部下が育つ会議術を考える。

【ダメな例1】「部下が育つのを待つしかない」と諦める

 部下の意見を汲み上げ、より良い案を作っていきたいのに、どうしても平行線に終わってしまう。「部下の意見が稚拙で、筋が悪いからだ。部下の能力が上がり、まともな意見が言えるようになるまで待たないといけないな。ここは期待せず、気長に待つか」。上司は早くも諦め顔だ。

 そんな表情を部下は必ず見ている。これではやる気も起きないはずだ。

【ダメな例2】常に「オレの意見」が正しいと思う

 「部下は何も分かっていない。意見を言ってくるのはいいが、考えが浅い。会社の歴史やこれまでの積み上げもあるのに、その辺りを理解しようとしていない。オレが『正しい意見』というものを教えてやらなくてはいけない」

 いつもそう感じている上司。継いで出る言葉は「君の意見は分かった。しかし会社の事情を考えると、それは難しい」。

 部下としては「何だよ。意見を言っても、結局は上司の意見に飲み込まれちゃうんじゃないか。その理由もよく分からないし」という心境だ。

 「納得度の高い合意形成」「意見を引き出して、より良い案を作る」ということ自体、かなり高度な作業である。だがこれにもコツがある。当社で「合意形成の氷山モデル」と呼んでいる概念だ()。

図●合意形成の氷山モデル
図●合意形成の氷山モデル
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 氷山の上に見えているのは「意見やアイデア」である。部下の「こうしたい」「こう思う」「なぜこうしないんですか?」などの意見は全て、この氷山の上の部分であり、ここだけが表に見えている。

 多くの会議ではこの表面的な意見だけを戦わせて、どちらの意見が正しいかという議論が展開されているものだ。

 しかし本来大事にすべきなのは氷山の上の部分ではなく、氷山の下側だ。意見やアイデアには、その発言に至った「背景」があるはず。それが氷山の下の部分である。

 その人独自の「経験や価値感、思い、知識」があって、意見やアイデアは海面に出てくる。このメカニズムを知っておくといい。

 価値観や経験を引き出し、話し合うことで、だんだんベースとなるものがすり合ってくる。結果、氷山の上の意見やアイデアもすり合ってくる。

 下の部分がすり合わないまま、上だけを合わせようとすると、全然納得度が高まらない。部下としては自分の案は「黙殺された」と思うだけだ。