企業が自己資金で投資活動を進めるCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)。国内では通信会社やネット企業を中心にCVCを設立する企業が徐々に増えつつある。通常のVC(ベンチャー・キャピタル)と異なり、事業シナジーが求められることの多いCVCがどのような活動をしているのかなかなか外からは見えにくい。
米サンフランシスコを拠点に活動するVC、Scrum Venturesは2016年11月16日、「Scrum Ventures CEO Summit」を開催した。開催は2015年に引き続き2度目で、200名を超える参加者が集まった。この中で、Scrum Ventures創業者兼ゼネラルパートナーの宮田拓弥氏をモデレーターに、米シリコンバレーに拠点を置き投資活動を展開しているヤマハ発動機、リクルート、三井住友カードの3社が登壇するパネルディスカッション「Japanese CVCs in Silicon Valley」が開かれた。一言でCVCといっても、企業によってその目的や意義が三者三様である実態が明らかになった。
起こりうる未来の変化を機会に変える
「いろいろ見せてもらったけど、よく分からんかったわ」。
ヤマハ発動機の柳弘之社長は2015年5月、2日間のシリコンバレー視察を終え、こう言葉を残して帰国の途に就いた。柳社長のアテンドをしたのは同年7月に設立するヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレー(YMVSV)でCEO(最高経営責任者)兼マネージングディレクターに就任する予定の西城洋志氏だった。
2014年5月からシリコンバレーに常駐して拠点の立ち上げ準備に入っていた西城氏にとって、経営陣自らが今起きつつある変革の波を肌で感じもらうことが重要だとアテンドに奔走した2日間だった。「徒労に終わった」と落胆した西城氏は後で大きな勘違いをしていたことを知る。