日々のSEの仕事に対してはどのように取り組むべきなのか。まず、SEの心構えから考えてみよう。ポイントは、「技術への好奇心」「実践力へのこだわり」「コンプライアンスの徹底」の三つだ。

 SEが持つべき心構えで筆者が最も大切だと考えるのは、「技術への好奇心」である。SEは、営業的な活動や経営判断を求められる場面も多いが、基本はエンジニアであり、ITの技術力がコアコンピタンスだ。

 技術への好奇心というと、まず思い浮かぶのは、次から次へと出てくる新しい技術や製品に対する興味だろう。3Dプリンターやドローン、ウェアラブルなど、ITは日進月歩である。ディープラーニングなど、専門家でも理解が難しい概念も次々と登場している。情報セキュリティの分野では、数年前の技術を知っていても役に立たない。バズワード的なものも多いので、好奇心と同時に技術を評価する目を養わねばならない。そのためには、旬の技術について調べると同時に、次のような問いを発する習慣を身に付けるとよい(図3)。

図3●技術への好奇心を持ち本質を捉える
図3●技術への好奇心を持ち本質を捉える
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  • この技術、一言で言うと?
  • 何が嬉しくなるんだろう?
  • どこがよくなったんだろう?

 新技術の仕組みやパフォーマンス、何ができて何ができないかを理解することは大事だが、それ以上に、その技術の必要性やメリットを考えてみてほしい。これを積み重ねると自分の中に技術に対する評価軸ができてくる。

 新しい技術にせっかくチャレンジしたが、使いものにならなかったというケースもある。そのときは、本質的な問題か、技術の成熟度の問題かを考えるとよいだろう。技術の成熟度の問題とは、コンセプトは画期的で理に適っており、適用範囲を限定すれば使えるのだが、限界を超えるとリソースを使い過ぎてレスポンスが悪くなるようなケースである。

 画期的で役立ちそうな技術と思っても、いきなり基幹系のシステムに適用できるわけではない。一般的に新技術は、ユーティリティーなど周辺技術の整備→システム構築技術の確立→マネジメント技術の確立という順に成熟度が向上していく。このため、成熟度を見極めながら、適用業務を考えていくことが大切だ。クライアント/サーバー(C/S)技術の適用も、最初はメインフレームに蓄積されたデータを集計するような業務から始まり、情報系、基幹系へと進んでいった。

 「技術への好奇心」は、旬の技術だけでなく、アルゴリズムや開発技術に対しても持ってほしい。「コンピュータはどうやって動いているんだろう」といったコンピュータ制御やネットワークプロトコルなどの基本から、オブジェクト指向などソフトウエアの開発技術、さらには業務を実現する仕組みや構造など、知っておくべきことはたくさんある。

 技術に好奇心を持って本質を捉える習慣を身に付けていれば、新しい技術が出てきたときに、短時間で用途やメリット、デメリットが理解できる。すると、どこまで学べば使いこなせるか、案件に利用できるかといったことも分かるようになる。