魔法使い:リスクを取ってブレークスルーを狙う

 魔法使いはRPGにおいて、攻撃的な魔法を駆使して効率的に敵を倒していく職業だ(図6)。戦士や武闘家を超える攻撃力を発揮する一方で、準備に時間がかかったり、身を守る力がほとんどなかったりと、リスクが付きまとう。戦士、武闘家、僧侶といった基本的な職業をそろえた上で、残りの一人は魔法使いを使って効率を上げていく、というのが一般的な戦略になる。

図6●魔法使いのロール
図6●魔法使いのロール
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 ITエンジニアの仕事上では、いつも通りの作業を淡々とこなすだけではなく、リスクを取って新しい手法を導入したり、イノベーションを生み出したりすべきケースがある。例えば、プログラミング主体のチームで、品質保証まで実施して不具合を減らすとか、テスト計画手法を使って最低限テストすべき項目の数を減らす、といった活動がこれに当たる。リスクゼロが望ましいが、安全策ばかりでは他社との差別化は難しい。

 魔法使いのみで構成されるチームは現実には無いだろう。魔法使いは前半の三つの属性が十分にある上で、活かされることを忘れてはならない。自分だけがこうした仕事を担えるからといって、天狗になるのも危険である。スキルを持っているならば、他のメンバーにも徐々に学んでもらうようにすべきだ。自分がいなくなったとしても、チームとして仕事が継続できるよう、知識移転に気を配ろう。

盗賊:情報を集め、分析し、取り入れる

 盗賊は、あまり人聞きのよくない職業であるが、RPGにおいては斥候や情報収集に長けたサバイバルの達人、といった性格の職業として定着している(図7)。器用さとすばやさを併せ持つ。

図7●盗賊のロール
図7●盗賊のロール
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 ITエンジニアの仕事上では、社内政治や交友関係を駆使し情報を集めてくるスキルを位置付ける。ただ仕事をこなすだけでは発見できない情報を適切なタイミングでもたらし、チームが向かう方向を修正できるようにする。勉強会やイベントに参加して社内外の知識を持ち帰ってきたり、社内の空いているリソース(会議室や備品など)や、新しい取り組みを聞いて協業関係を模索したりする、といった幅広い動きが盗賊の持ち味になる。チーム内外の人々と付き合っていくためには、良いコミュニケーターである必要があるだろう。

 盗賊のスキルのみを高めても、チームとしての仕事が進まない可能性がある点には留意したい。情報を取ってきても、実装できるとは限らない。手は動かないが理想だけは高い「意識高い系」になると、チームの他のメンバーからの信頼を得にくくなってしまう。

 そのため、具体的な実装力(前半三つのスキル)も高めていくことをお勧めする。新しい情報を持ってきたら、実際にそれをチームで実現するにはどうしたらいいか、前半3スキルが高いメンバーと意見交換してみよう。現在はどうしているのか、弟子入りして教えてもらおう。