ここまで典型的な型を紹介してきた。大事なのは、自分を何らかの型に当てはめることではなく、今の自分の型を認識し、次に習得するスキルを考えることだ。スキルの習得には時間が掛かる。知識を学び、実際に繰り返してみながら、やっとコツをつかみ、いつでもできるようになる。他の人に必要とされたタイミングで、必要な成果を提供できるのがプロフェッショナルのスキルといえるだろう。

 もちろん、人それぞれに得意不得意もある。明らかに不得手なスキルに時間を掛けるのは、できれば避けたい。一方で、苦手と思っていても学んでみるとそうでもない場合もあるので、試してみよう。自分の成長に責任を持てるのは中長期的には自分だけなので、自分で選んでいく必要がある。

 学んだスキルがすぐにチームで活かせれば、早く熟達するし、成果も得やすい。チームの状況を無視して自分の好きなスキルを習得するのも自由だが、その分少し遠回りになる。最終的には自分で決めることだが、まずチームの状況を分析し、じっくりと自分のスキルの成長戦略について考えてみたい。

 続いて、チーム力の分析にスキルマップを使う方法を紹介する。

チーム力の分析

 チームの他のメンバーが持っているスキルについても分析してみよう。互いに分析したものを集めてもいいし、まだ他の人にやってもらう自信がないなら自分で分析してみてもいい。チーム全体としてはどのようなスキルの分布を持っていて、その中で自分はどのように貢献できそうか、今後どのようなスキルを身に付けていけばチームに役立ちそうかを気づくきっかけにするのだ。

 スキル習得の面でも、分析は役に立つ。他のチームメンバーが持っているスキルなら、困ったときは相談したり、教えてもらったりできるだろう。そのスキルを使っているところも観察できるため、比較的学びやすい。一方で、即戦力として貢献しやすいのはチームにないスキルのほうかもしれない。チームにないスキルの場合は、学び方から自分で見つけてくる必要がある。

個人の力の合成について考える

 図6はチーム内の複数のメンバーのスキルの合成について示したものだ。例えば、メンバーAさんとBさんがいる場合、スキルマップで2人のスキルを分析すると、図左のような形になる。色が付いているところがマークされたスキルだ。チームの総合的なスキルはちょうど2人のスキルを重ね合わせた形になる。この場合、AさんもBさんもバランス型で、互いの専門性も違う。そのため、チームとしてはより効率的に幅広いスキルを持てる。AさんBさんのチームに、器用貧乏型に近いCさんが入ってきても、チームに貢献できる範囲は大きくない。

図6●チーム内のメンバーのスキルを合成
図6●チーム内のメンバーのスキルを合成
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 実際に仕事を進める上では、性格や相性の問題があり、単純には組み合わせられないのが常だ。だが、もしそういった問題がなければ、潜在的にはチームがこのようなスキルを発揮できる可能性を示している、と見るのがいいだろう。

 Cさんは今後、どのように振舞うべきだろうか。ラッキーなことに、AさんもBさんも共通のスキルを持っているため、会話は進みやすい。AさんまたはBさんの得意分野を教えてもらいながら習得するのは効率的であると推察される。チームとしても十分な余白があるため、AさんBさんとは異なるスキルを身に付ければ、チームに貢献できる可能性が高い。おそらく正解はなく、Cさん自身がどちらを選ぶのか、何が得意で情熱を持って学べるか、自己分析に掛かってくる。