今回紹介する書籍『ITリーダーが確実にファシリテーションを身につける本』は、「読むだけの本」ではなく、「実践型の本」です。理論を解説する前にすぐに使える「口ぐせ」を掲載しており、そこには「まず試してください」という著者のメッセージが込められています。ファシリテーションの重要性は分かっているがどうすれば身につけられるのか分からない。そんな悩みを抱えている人にはぜひ読んでほしい。では、『ITリーダーが確実にファシリテーションを身につける本』の「まえがき」をお読みください。(松山貴之=日経BP社 コンピュータ・ネットワーク局 ネット事業プロデューサー)

 書籍『ITリーダーが確実にファシリテーションを身につける本』は、実践重視型のファシリテーションの本です。従来の知識や理屈を重視した本とは大きく違います。文体もあえて話し言葉に近いものを採用しており、筆者自身のことを「私」と表現し、読者のみなさんに語りかけるように書いています。

 私は長年IT業界にいて、SE、チームリーダー、プロジェクトマネジャー、ITコンサルタント、研修講師と、システム開発に関わる仕事を一通り経験してきました。今振り返ってみても、もともと理系学部出身だった私には、この業界の仕事はとても合っていたと思います。しかし、私には大きな転機が1つありました。それはファシリテーションとの出会いです。

 ファシリテーションは、私自身のリーダーシップの課題を解決してくれると共に、当時訪問していたコンサルティング先の社員にどうモチベーション高く活動してもらうかという「人を動かす」スキル習得に、大いに役立ちました。

 しかし私が学び始めた当時は、ファシリテーションと言う言葉はほとんど認知されておらず、学び方も試行錯誤だったので、身につけるまでに多くの失敗をし、そして多くの時間がかかりました。

 書籍『ITリーダーが確実にファシリテーションを身につける本』に書かれていることは、そんな私の失敗と成功の体験から生まれたノウハウです。私が実際に現場でやって効果を出してきたことばかりです。それらをみなさんにお伝えすることによって、皆さんには、より早く、より簡単に、より適切に、ファシリテーションを習得して頂き、役立ててほしいという思いでいます。

 この本は3章構成になっています。

 1章は、『今すぐ使える!ファシリテーターの口ぐせ』です。ファシリテーターが実際によく使う、11個のシンプルな口ぐせを選び、ファシリテーションに関する知識が何もなくても実践できるように簡潔にまとめました。11個の口ぐせの一つひとつは独立しているので、どの口ぐせからでも、今すぐに使うことができます。

 面白そうだなぁ、使ってみたいなぁと思った口ぐせから、実践してください。

 2章は、『知っておこう!ファシリテーションの基本』です。通常、書籍でもセミナーでも、まずはファシリテーションについての知識や座学から入っていきます。しかし、この本は違います。なぜなら、ファシリテーションを学ぶ人の中に、知識を学んだだけでファシリテーションができるような気になってしまったり、逆に難しさを感じて、その先に進もうとしない人がいたりするからです。そういう人を1人でも少なくするために、あえて2章に知識編も持ってきました。

 まずは1章で紹介する「口ぐせ」を実践し、理屈を抜きにして、ファシリテーションの勘所をつかんでください。その後、実践から得た「あー、ファシリテーションってこんな感じかあ…」という感触を踏まえ、2章で学んだファシリテーションの基本を「腹落ち」させてほしいのです。

 3章は、『チーム脳の作り方』です。さあ、ここが本格的なファシリテーションスキルです。チーム脳とは、アクションラーニングというチーム学習手法から生まれた言葉です。それは、次のようなイメージです。