「人工知能(AI)」によって世界が大きく変わろうとしています。今はその夜明け直前にいることを感じさせるのが本書『世界トップ企業のAI戦略』です。著者は技術に強いビジネスコンサルタント。トップを走る企業がどんな戦略を描いているのかを本書で分かりやすく解説しています。AIビジネスを企画したいと考えているエンジニアにお薦めです。『世界トップ企業のAI戦略』の「まえがき」をぜひお読みください。(松山貴之=日経BP社 コンピュータ・ネットワーク局 ネット事業プロデューサー)

 2013年頃にスタートしたといわれている「第3次人工知能ブーム」の勢いは、現在もとどまることを知らない。国内外の様々な企業が、「人工知能を使った新規事業を展開」「人工知能技術を有するベンチャー企業を買収」「人工知能研究所を設立」など、人工知能に関連するニュースを見ない日はないといってもよいくらい、その勢いを増している。

 1956年のダートマス会議に端を発した人工知能は今年で60歳を迎える。60年間の歴史の中で、人工知能は2度のブームと2度の冬の時代を迎えた。3度目となる今回のブームは、いったいこれまでのブームと何が異なるのだろうか。

 これまでのブームでは企業が提供する「製品」に新しい価値を付加するために人工知能が使われてきたが、現在のブームは企業の「製品」でなく「ビジネス」そのものに新しい価値を付加するために人工知能が使われている、この点が最大の違いであると我々は考えている。

 つまり、これまでは「賢い冷蔵庫」といった製品をつくるために人工知能を使ってきたが、今回のブームでは、冷蔵庫に限らず住宅内の全家電から収集したビッグデータと「宅配」「見守り」「外出喚起」といったサービスとを賢く連携させるビジネスをつくるために人工知能を使っているのだ。

 書籍『世界トップ企業のAI戦略』はそのような背景を受け、主に人工知能を使った新規事業を検討しているビジネスパーソンを意識して書いた。人工知能を使った新規事業といっても取り組む立場は様々であるが、どのような方々にでも、なんらかのヒントになればと思っている。

書籍『世界トップ企業のAI戦略』の構成

 第1章「人工知能ビジネスの全体像をつかむ」では、1990年以降、ビジネスの価値源泉がどのように変化し、人工知能が価値源泉にどのように寄与するか、について説明する。ここで、第2章以降の企業を分析するための枠組みを紹介する。

 第2章から第6章までは、「農業」「ものづくり」「自動車」「住宅」「医療」の5つの領域において、人工知能を使って新しいビジネスを展開している「主要企業」「注目企業」合わせて52社の企業動向を紹介している。52社のうち、ほとんどがグローバル企業であることに注目したい。世界では、誰もが知る大企業から、ベンチャー企業まで、実に多くの企業が、人工知能を使った新規ビジネスを創出しているのだ。

 第2章から第6章までで紹介している「主要企業」に関しては、新規ビジネスにおける「想定顧客」と「提供価値」を明らかにした上で、「どのようなバリューチェーンを誰と構築しているか」「バリューチェーンの中でどのように人工知能を適用しているか」「そのためにどんな資源(ヒト・モノ・カネ)を投入しているか」について、それぞれ説明している。特に特許調査によって、人工知能技術を応用した具体的な取り組みについて紹介している点が大きな特徴である。

 一方、注目企業については各領域において、ユニークな取り組みをしている企業を選択して取り上げた。

書籍『世界トップ企業のAI戦略』の読み方

 読み方は2通りある。1つは52社の中から興味のある企業、もしくは読者の業界に関連する企業から読む方法である。まずは国内外の注目企業が人工知能を活用し、どのようなビジネスを展開しているか知りたい方には、この読み方をおすすめする。もう1つは、第1章の考え方をもとに各領域で2社ずつ取り上げている主要企業の分析を、じっくり読む方法である。

世界トップ企業のAI戦略
世界トップ企業のAI戦略
EYアドバイザリー 園田展人

日経ストア(電子書籍)
BP書店(書籍)
Amazon.co.jp
楽天ブックス
BookLive!
honto
紀伊國屋書店
セブンネットショッピング