ワニのマークでおなじみのポロシャツなどを製造・販売するラコステ ジャパン。現在、国内に約140店舗を展開している。そのうちの主要20店で、2015年5月から店舗運営体制が大きく変わった。

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 新しい店員管理システムを導入し、繁忙期には店員を多めに配置して販売機会ロスを減らし、逆に閑散期には店員の数を抑えて売上高人件費率を低く保ち、効率的に店舗を回せるようにしたのだ。

 こうした店舗運営の効率を測るKPIを、ラコステ ジャパンは2つ用意した。「SPH(セールス・パー・アワー)」と「SOT(セールス・オーバー・トラフィック)」である。

 SPHは店員1時間当たりの平均売上高を、SOTは来店客(トラフィック)1人当たりの平均売上高をそれぞれ表している。この2つのKPIを常に追いかけることで、ラコステ ジャパンは店舗オペレーションを抜本的に変えようとしている。

2つのKPIでオペレーション変革

 店舗で雇用できる店員の数には、限りがある。人数の制約があるなかで来店客が押し寄せるピーク時間帯にも顧客対応レベルを落とさないように、適正な人員を配置する。なおかつ、多様な働き方を尊重し、店員の納得性が高い勤務スケジュールを立てる。

 一見、矛盾するような店舗運営を可能にした秘密兵器が、ウィンワークス(東京・千代田)が提供する新しい店員管理システム「WINWORKS One」だ。フランスに本社があるラコステ ジャパンだが、新システムは日本法人が独自に採用を決めた。携帯電話の販売店などへの導入実績は既にあったが、アパレルショップでの採用は初めてという。

 ラコステ ジャパンはウィンワークスと成果報酬型(レベニューシェア型)の契約を結んでいる。同社はウィンワークスの担当者と定期的に会合を持ちながら、日々KPIの改善に努めている真っ最中だ。

 2つのKPIで店舗の生産性とパフォーマンスの向上を評価しながら運営していく施策は、システム導入から1年たたずに早くも大きな成果を生み出している。2015年10~12月の実績では前年同期比でSPHが10.4%増、SOTが10.6%増と、ともに10%以上も単位当たりの平均売上高が上昇した(20店のうち、前年と比較できる18店の実績)。

 KPIを2種類見ているのには理由がある。単に店員の時間当たりの売上高を見るのではなく、トラフィック当たりの売上高を併せて見ることで、各店舗が置かれた個別の環境に見合う評価を正しく下せるようにしているのだ。

 というのも、周辺地域の競争が激化しているショッピングモールなどに入居している店舗ではトラフィックの変化が大きい。商業施設全体のトラフィックが前年対比で20%以上減少しているようなことも珍しくはない。そんな施設内にある店舗は当然苦戦を強いられ、店員がどんなにがんばってもSPHがある程度落ちるのは仕方ない。それでも施設全体のトラフィックの落ち込みに比べて、店舗のSOTがさほど落ち込んではいないと分かれば、その店舗は施設内ではむしろ「健闘している」と評価できるわけだ。