2016年は「VR元年」と言われている。その理由は、相次いでヘッドマウントディスプレイ型のVR装置が登場したためだ(写真1)。

写真1●VRを実現するヘッドマントディスプレイの例。写真は「HTC Vive」
写真1●VRを実現するヘッドマントディスプレイの例。写真は「HTC Vive」
(写真提供:HTC NIPPON)
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 2016年に入り、米Oculus VRの「Oculus Rift」や台湾HTCの「HTC Vive」など、10万円前後のヘッドマウントディスプレイ(HMD)型のVR装置が相次ぎ登場した。さらにスマートフォンを使ってVRを実現する「VRゴーグル」も1000円程度から続々と登場。Amazon.comなどの通信販売や家電量販店で手軽に入手できるようになった。そして遂に2016年10月13日にソニー・インタラクティブエンタテインメントがHMD型装置「PlayStation VR(PS VR)」を発売。税抜き価格で4万円台からという手ごろな価格で、HMD型VR装置への注目が一気に高まった。

業務利用も既に始まる

 装置の普及と並行して、これまでゲームなどのエンタテインメント中心だったVRを業務に適用する企業も増えてきた。

 その代表例が大京穴吹不動産の「ぐるっとネットdeオープンルームVR」のようなマーケティング用途だ。不動産の物件見学のほかに、旅行代理店が旅先の魅力をアピールするためのVRコンテンツを作成したり、自動車のディーラーが様々なオプションを付けた内装を体験できるVRコンテンツを作成したりと活用が始まっている。

 マーケティング用途のほかに多いのが、「教育・訓練用途だ」とVRの導入を支援する富士通の畠中靖浩氏(統合商品戦略本部 ソフトウェアビジネス推進統括部 VR/ARソリューション推進部 部長)はこう話す。同社では設備メンテナンスの技術者を育成するためのVRアプリケーションを顧客企業と共同で開発した。「VRの適用分野を絞る際に最も重要なのは、『実現したいと思っても、実現が難しかった分野』は何かを考えることだ」と畠中氏は強調する(図1)。

図1●VRの業務への応用例
図1●VRの業務への応用例
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