産業用ロボット大手のファナックが変貌を遂げようとしている。2016年4月に、工場内でIoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用したソフトウエア製品群の開発を発表。8月にはロボットメーカーやデバイスメーカー、ITベンダーなど約200社をパートナー企業として迎え入れた。ソフトウエア製品群を2016年12月末に、IoTのプラットフォームとして提供開始する。

 「将来、ファナックにとって必要不可欠な事業に成長する」。こう話すのは同社の稲葉善治 代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)だ。IoTプラットフォームとして開発を進める「FIELD system(FANUC Intelligent Edge Link and Drive system)」を中核に、将来は数千億円規模の事業に成長させる。同社の2015年度の連結売上高6234億円から大幅に増やす。

 同社はもともと、工作機械の制御技術に関連する分野に特化して事業を展開してきた。1956年に民間初のNC(数値制御装置)の開発に成功して以来、制御技術を中核に、ロボットなどの分野に進出してきた(写真1)。稲葉会長は「強みのある分野に特化することが企業体質を強くする」と語る。

写真1●ファナックが開発、提供する産業用ロボット。シンボルともいえるイメージカラーは黄色である
写真1●ファナックが開発、提供する産業用ロボット。シンボルともいえるイメージカラーは黄色である
(写真:陶山 勉)
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 FIELD systemの開発に着手することで、ファナックはIoTプラットフォームの提供という新たな事業分野に進出する。これは、稲葉会長の「強みのある分野に特化する」という説明に相反するようにも聞こえる。しかし実際は矛盾していない。