条件の6と7を紹介しよう。

条件6
プロマネ必須の技3「リスクマネジメント」

 プロマネ必須の三つめの技。それは「リスクマネジメント」である。プロジェクトは独自性があり、必ずリスクが存在する。しかもITプロジェクトは、戦略的で複雑化しており、常に非常に多くのリスクがある。プロマネの経験が浅いうちは、未経験ゆえのリスクに数多く直面するだろう。

 リスクマネジメントの手法は即効性があり、非常に有効だ。思わぬ大ケガを防ぐために、プロマネならリスクマネジメントを必ず覚えよう。

 リスクマネジメントは、基本的に次の手順を踏む(図6)。(1)リスク特定、(2)リスク分析、(3)リスク対応計画、(4)リスクコントロール―である。

図6●リスクマネジメントの流れ
図6●リスクマネジメントの流れ
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 (1)リスク特定ではリスクを洗い出し、(2)リスク分析では発生確率と影響度を求め、リスクの優先度を決める。優先度を決める理由は、すべてのリスクに対処するのはコスト面などから非現実的だからである。

 続く(3)リスク対応計画では、優先度に基づき、対応策を決める。最後の(4)リスクコントロールでは、プロジェクト全期間にわたって、リスクを監視しながら、リスクへの対応をコントロールする。

 リスクマネジメントで一番の肝は、(1)リスク特定だろう。リスクに気付いていなければ対処ができない。そこでリスク特定で有効な技として、「RBS(Risk Breakdown Structure)」をお勧めしたい(図7)。

図7●RBSの例
図7●RBSの例
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 RBSは、WBSと非常に似ている。WBSとRBSの作り方はほとんど同じだ。RBSは、リスクとなる要素を漏れなく分解し、構造化する。

 複雑で大きいプロジェクトのリスクを洗い出すには、RBSのように構造化して考えていくことが有効だ。プロジェクトの上位要素から100%ルールで漏れなく分解していくことで、リスクの洗い出し漏れが少なくなる。

 ただし、RBSを作ればリスクが自動的に洗い出されるわけではない。RBSを作ったら、それを基にリスクとして何が想定されるかを洗い出す作業が必要である。それには、ぜひブレ―ンストーミングをお勧めしたい。

 ブレーンストーミングでは、1人で考えても出てこないリスクについて、複数の人のさまざまな視点で洗い出す。原則的に自由奔放にアイデアを出すが、ある程度テーマを区切って実施するとアイデアが出やすくなる。例えば、テーマを「プロジェクトのリスク」とするよりも、「スケジュールに関するリスク」としたほうがアイデアが出やすくなる。ここでRBSを使い、分解されたリスクの要素に従って、ブレーンストーミングを実施すると、リスク洗い出しの網羅性が高まる。