条件の4と5を紹介しよう。

条件4
プロマネ必須の技1「WBS」を使いこます

 では、ハードスキルは重要ではないのかといえば、もちろんそんなことはない。プロマネの基盤となるのはハードスキルである。ハードスキルが不足していては、そもそもプロマネとは呼べない。知識だけでなく、実践力を伴うスキルを身に付けたい。

 ただし、ハードスキルは多岐にわたる。PMBOKガイドが提供する10の知識エリアのそれぞれに、さまざまなPM技法がある。まずは、スコープマネジメントの観点から、プロジェクトの道しるべとなる「WBS」を使いこなそう。

 WBSは、プロジェクトの成功に大きく貢献する技法だ。「目的を達成するために必要な作業(Work)を、漏れなく分解(Breakdown)し、構造化(Structure)して見える化する」技術である。

 WBSは一般に、ツリー形式、もしくはリスト形式で階層構造を表す。このWBSは作業の抜け・漏れ、重複を防止し、スケジュール、コスト、品質など、さまざまな計画のベースとなる、プロジェクトの要である(図4)。

図4●プロジェクトの要になるWBS
図4●プロジェクトの要になるWBS
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 では、WBSはどのように作ればよいのだろうか。ここでは、プロマネとして押さえておくべき四つの定石について紹介しよう。

 定石1は「ローリングウェーブ計画法を使う」である。ローリングウェーブ計画法とは、段階的詳細化のことだ。ソフトウエアの開発が伴うプロジェクトでは、不確定要素が多く、先の作業がなかなか見えてこない。こうした場合、今から着手する上流工程のWBSは詳細に作り、下流工程のWBSは粗く作っておく。そして、上流工程で仕様が明らかになった段階で、下流工程のWBSを詳細化する。これがローリングウェーブ計画法である。

 定石2は「ツリー形式はアウトライン作成時に利用する」である。WBSの表記は、一般にツリー形式、もしくはリスト形式で記述する。ツリー形式のよいところは、直感的かつ鳥瞰的に理解しやすい点である。一方、リスト形式のメリットは、スケジュールや役割分担の作成につなげやすい点だ。

 このためツリー形式は、チームで相談しながらWBSを作る際(アウトライン作成時)などに思考ツールとして利用すると効果的である。出来上がったWBSは、表計算ソフトを使ってリスト形式にまとめ、プロジェクト計画につなげていく。

 定石3は「成果物とプロセスに着目して作業を分解する」である。作業を洗い出す際には通常、最上位の作業からトップダウンで分解する。その際、まず成果物かプロセスのどちらかの視点を決めて作業を洗い出し、その後、もう一つの視点に変えて作業を補足していくのがセオリーだ。

 成果物ベースの分解は、上位の成果物(サービスを含む)とその構成要素(部品やサブシステムなど)の関係に従って作業を洗い出す。これに対してプロセスベースの分解は、時間軸(作業の進め方)に沿って作業を洗い出していく。ローリングウェーブ計画法で進めるときにはプロセスベースで分解していくのが有効である。

 定石4は「100%ルールを満たす」である。作業の分解に当たっては、漏れなく洗い出すために「100%ルール」が大切である。つまり、親子関係の「子」に当たる作業の集合が、その上位の「親」の作業内容を網羅するように作るわけだ。

 100%ルールは、WBSのすべての階層に適用される。従って、作成したWBSについては100%ルールを満たしているかどうかを必ず確認しよう。