近年、ITに関連するプロジェクトマネジメント(以下、PM)が広く普及し、プロジェクトマネジャー(以下、プロマネ)という職種・役割にも注目が集まっている。

 注目される背景の一つには、ITプロジェクトの高度化がある。ソフトウエアは「目に見えないロジックの集合」であるため、要求仕様が曖昧で、コミュニケーションの良しあしなどが影響しやすい。また、ITに関連する技術の進歩によって、ハードウエアのリソース面の制約がなくなり、プロジェクトが大規模化・複雑化している。

 さらには、IT利用の成熟に伴い、戦略的な狙いを持つシステムの需要が増している。このようなシステムは、利用部門の要求を捉えにくく、景気変動などの外的要因の影響も受けやすい。

 年々増加する高難易度のプロジェクトに取り組むため、PMも大いに発展してきた。その代表が、1990年代に導入された「モダンPM」の手法だ。モダンPMとは、「普遍的、汎用的にまとめられたPMの知識体系を使って」プロジェクトをマネジメントする手法である(詳しくは第4回の別掲記事を参照のこと)。モダンPMの代表が、今や広く知られているプロジェクトマネジメント体系の「PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)ガイド」である。

 21世紀に入ると、モダンPMに取り組む先行企業からの成果が報告されるようになり、「モダンPMブーム」とも呼べるような現象が起こった。いまや、モダンPMへの取り組み状況が弱いと、ユーザーからマイナス評価を受ける状況である。モダンPMは国際的にも大いに普及している。PMBOKガイドを発行している米国のPMI(Project Management Institute)や、欧州のIPMA(International Project Management Association)、そして日本でもプロジェクトマネジメント学会といった組織が活発に活動している。

 では、そんな中で第一線で活躍するプロマネにはどんな知識・スキル・経験が必要なのか、また今後のキャリアはどのように考えればよいのか。以下では「本物のプロマネ」として押さえておきたい七つの条件についてそれぞれ解説しよう。

条件1
プロマネという仕事の面白さを味わう

 モダンPMの知識や経験を備えたプロマネが注目されるようになったのは2000年代以降である。しかし、プロマネが指揮するプロジェクトは先述したように次第に高度化。過酷な状況の中で、ITベンダーのプロマネは「QCDS+CS(品質・コスト・納期・スコープ+顧客満足度)」、ユーザーのプロマネは「ビジネスへの貢献」という責任を果たす必要が出てきた。プロマネという仕事が3K(きつい、厳しい、危険、IT業界では帰れない)と考える人が増えてきたのもそのためである。

 では、プロマネとは本当に3Kの仕事なのか。そもそもプロマネの魅力とは何なのか。筆者らはプロマネこそ最も面白い職業・役割の一つだと考える。

 プロマネになって人を動かし、チームで大きな仕事をやり遂げる。これは非常にやりがいがあることだ。プログラムを動かすことを楽しいと感じる人は多いだろう。それと同じようにチームを動かして何かを作り上げることは楽しいはずだ。これは「感謝・感動・感激」という新3Kを味わえるのがプロマネだといっていい。

 では、旧3K(きつい・厳しい・帰れない)と新3K(感謝・感動・感激)になるプロマネの根本的な違いはどこにあるのか。それは、プロマネが受動的か能動的かの違いにある。