トヨタ自動車の協力を得て、新車点検拠点や店舗の業務をIoTで変革する名古屋トヨペット。次世代店舗「三好店」では車検に来た顧客の到着時からカメラやRFID(車両タグ)、iPod touchを駆使して、「おもてなし」を尽くしている。

 店舗1階にある次世代作業ピット(ICU)もIoTで大きく変わった。カルテレスにより電子化された整備の作業指示は、検査員のiPod touchに送られる。従来のような紙の整備指図票はもうない。実行すべき整備情報はエンジニアが使う新型の「システム台車」のモニターに転送。やはりカルテレスで業務を進める。これで無駄な歩行や入力を減らしている。

 それだけではない。整備で使うデプス(タイヤ溝測定器)やノギス(ブレーキパッド測定器)といった工具類はIoTに対応し、測定値をシステム台車に転送できる。これなら紙に記入する手間を省け、記録間違いも起きない。また、エンジニアは頭にヘッドセットを着けている。作業の手を止めることなく、音声で「交換よし」といった具合に、iPod touchに結果を入力していく。

次世代作業ピット(ICU)はカルテレスを徹底。整備に使う新型の「システム台車」には携帯端末から指示を転送でき、ヘッドセットから音声入力も可能(左)。デプスやノギス、トルクレンチといった工具はIoTに対応し、台車に測定値を自動記録する(中央)。三好店では車検のリードタイムを45分から30分に縮めるため、AGVも使って担当者3人が15分で整備作業を完了できる体制を目指す(右)
次世代作業ピット(ICU)はカルテレスを徹底。整備に使う新型の「システム台車」には携帯端末から指示を転送でき、ヘッドセットから音声入力も可能(左)。デプスやノギス、トルクレンチといった工具はIoTに対応し、台車に測定値を自動記録する(中央)。三好店では車検のリードタイムを45分から30分に縮めるため、AGVも使って担当者3人が15分で整備作業を完了できる体制を目指す(右)
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写真撮影:北山 宏一

 新しいシステム台車は、従来45分ほどかかっていた車検を最短30分で完了することを目指したトヨタの秘密兵器だ。トヨタは2015年から実用化を進めてきた。30分とは顧客に車両を引き渡すまでのトータルの時間を指す。実際に整備にかけられる時間は15分ほどしかない。

 三好店では現在、3人1組で15分の車検作業を実現しようと奮闘中だ。少しの時間も無駄にはできないため、タイヤの運搬などは一部、AGVが担い、生産性を高めている。移動がスムーズになったシステム台車とAGVを組み合わせ、年配や女性のエンジニアでも重いタイヤなどを楽に扱えるように工夫している。