「格安スマホ」や「格安SIM」という呼び方が示すように、通信料の安さ一辺倒で大手携帯電話事業者と競争してきたMVNO(仮想移動体通信事業者)業界。だが今、新たな付加価値の提供で勝負する「次世代型MVNO」が相次ぎ台頭している。代表格がチャットアプリのLINEや小売業のイオン、電子商取引(EC)の楽天だ。各社に共通するのは携帯通信以外を生業とし、大きなシェアを握っている点。独自流の「必勝パターン」を通信の世界に持ち込み、差異化を図ろうとしている。消費者への知名度の高さも武器だ。

 本特集では、LINEモバイルやイオンモバイル、楽天モバイルのキーパーソンへインタビューした。トップバッターはLINEモバイルだ。LINEのデータを通信量にカウントしない「カウントフリー」など個性的なサービスで話題を集める同社の嘉戸彩乃社長に戦略を語ってもらった。

(聞き手は高槻 芳=日経コンピュータ

2016年9月にMVNO事業に参入した。

2016年にMVNOに参入したLINEモバイルの嘉戸彩乃社長
2016年にMVNOに参入したLINEモバイルの嘉戸彩乃社長
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 LINE社内では数年前からモバイル通信事業について様々な可能性を検討してきた。MVNO市場に参入する方針が固まったのは2015年夏のことだ。大手携帯電話事業者と似たサービスを目指すのではなく、大手ではカバーしきれない需要を満たしていくことで、国内スマホ市場のさらなる拡大につなげるのが狙いだ。

カウントフリーの導入が注目されている。

 従来は「月額いくらで何ギガバイトまで使えます」というプランが主流だが、スマホの初心者や未経験者には分かりにくい。自分の使い方で1カ月のデータ通信量がどの程度になるか見当が付かないからだ。でも、今どのアプリを使っているか、ということなら誰でも分かる。このアプリを使うときはフリー(無料)ですよ、というほうが安心感がある。