某製造業の現役IT担当者がIT部門消滅の実体験を基に、新たなIT部門の在り方を提起する連載の第5回。著者は、200台のサーバーの仮想化に続き、業務システムの内製化も実現する。「ひとり情シス」であるにもかかわらず、なぜ内製にまで踏み込めたのか。カギは開発環境の「自分パッケージ」にあった。その詳細と、さらなるデータ活用について述べる。

 システム内製と言っても、基幹システムの内製は一人では難しい。全社横断的に使用しており、金の計算まで行っているので品質要求も高い。技術がもっと進歩したらそれも可能になるかもしれないが、今は外部委託でよい。外部委託と内製は、目的とバランスで考える必要がある。私が内製しているシステムは、基幹システムには機能が無い補助業務のサポートという位置づけにしている。基幹システムのデータを活用しながら、業務の変化と効率化に対応するものである。

 ちょっとした業務システムを新規で構築するとき、特別な制約がなければ最近はWeb-DBで構築するであろう。仮想サーバーにWindowsまたはLinuxをインストール後、必要なミドルウエアやAPLをインストール。それらが連携するように各種設定を行い、ようやくその上でプログラムを動かせるようになる。システムにはたいてい認証(ログイン)が必要であり、ログイン後はメニューが表示されるのが一般的だ。これまで多くのシステム開発に関わってきたが、ここまではどのシステムも同じである。

 しかしシステム構築を外部委託すると、ゼロから構築する場合がほとんど。つまり毎回、同じようなものを作るためにコストをかけている。これはITベンダーの都合であることも多く、システムごとに異なる基盤は、完成後も面倒を見る立場としては都合が悪い。

 自社でシステムの基盤部分を押さえておけば、外部委託するにしてもAPLによる機能開発だけで済む。当然コストも下げられるし、ロックインされて手足も出せず足元を見られることもない。そこで、メニューが表示されるところまでを標準型として作っておいて、それを丸ごと複製することでシステム立ち上げを高速化する環境を作った。言うなれば「自分パッケージ」の活用である(図1

図1●システム内製を一人で行うための工夫「自分パッケージ」
図1●システム内製を一人で行うための工夫「自分パッケージ」
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