某製造業の現役IT担当者が実体験を基に、新たなIT部門の在り方を提起する連載の第4回。ひとり情シスとして「やれることやる」と腹を括った著者は、200台の物理サーバーの仮想化を進め、大きな成果を出した。しかし、そんなある日、他部門の人の一言で「IT部門やIT担当者がなぜ評価されないのか」を思い知る。いよいよ業務システムの内製化が次なる目標になる。

 ひとりでも運営できる環境が整い、私も人間らしい生活ができるようになり、自己満足に浸っていた頃、他部門のある人の次の一言が私に衝撃を与えた。「サーバーなんていらないんだよね」。これは、「業務を楽にする便利なシステムは欲しいけど、サーバーはよく分からないし、できれば関わりたくない」という流れの話から出てきた言葉である。

 「そういうことか!」。ユーザーにとって要らないものを管理するIT部門だったから、評価もされなかったのか。システム構築にはサーバーが必要だが、ユーザーにとっては、サーバーはよく分からない面倒なものでしかないのである。

 確かに、これまで私はコンピュータのほうばかりを向いていた。反省すると同時に、この先どうあるべきかを考える機会となった。ユーザーは何を望んでいるのか、そして自分にできることは何かを考えた結果、IT投資が困難でシステム化や自動化が滞っている状態を、業務システムの内製で解決に導くことを、次なる目標とした。

基幹システム運営も効率化、中間業者からの脱却

 自社にも基幹システムがある。プロジェクト管理や予算管理、受発注管理や経理処理の源泉データ管理など、何でも行う中核的な役割を担う業務システムである。当初はWindows95の時代に開発したクライアント/サーバー・システムであったが、その後Webシステムに作り直して現在も運用している。

 基幹システムの開発は外部委託しており、以前は協力会社だけでも常時3~4人体制でシステム的なサポートやマスターメンテナンス、機能追加などの対応をしていた。丸投げ状態であったために、ログインとシャットダウン以外は全く手出しができない状態であった。

 ちょっとした作業をするだけでも外部委託する必要があり、何をやるにもコストも手間も時間もかかるシステムであった。ITベンダーに依存しすぎたシステムだったために、データベース内のデータも活用できないだけでなく、時々OSがロックして運用が止まるという不安定な状態も解決できずにいた。

 自由に手が出せない。何をするにも予算取りから始めなければならない。データはあるのに活用できない。時間がかかる。このような状態にIT部門が消滅する前からストレスを感じていた。元々何でも自分でやりたい性格だったこともあり、私は密かに内製化のチャンスを狙っていた。時々発生する改造や不具合修正、バージョンアップなどの投資に合わせ、自社でもいじれるように環境の改善を要件に入れてもらったりした。IT投資が難しくなる以前の話である。