某製造業の現役IT担当者が実体験を基に、新たなIT部門の在り方を提起する連載の第3回。IT部門が消滅し、唯一のIT担当者となった著者は、予算も無く社内の協力も得られない状況で、転職を考えるほど追い詰められる。だが、「どうにでもなれ」と開き直った瞬間、ひとり情シスとしての新たな道に気付く。早速、「ひとり」を前提に、課題や取り組むべき事のリストアップから始めた著者は、意外な事実に気付く。

 リストアップされた具体的な課題や作業は、大小さまざまで200を超えた。それらを解決するために必要な知識やソフトウエアは、インターネットで入手できる。商用製品ですら条件次第で無償で使える。なんてすばらしい時代になったんだろう。ITの進化は圧倒的な追い風である。

 正直なところ、心の底では「ひとりで全部やるなんて無理だ」と思っていた。しかし、やってみたら意外にできてしまう。課題の中で特に重要視していたのは、200台もの物理サーバーを減らすこと。老朽化サーバーは性能も悪く、一度障害を起こすと復旧に時間も労力もかかる。IT機器は7年も過ぎると部品の調達が困難なものも多いため、早急な対策が必要である。

 物理サーバーを減らしたいとなると仮想化技術の出番である。世間では仮想化ブームが一段落して、仮想化ソフトウエアの品質も安定し、商用製品も条件付きで無償提供していた。世間からは一足遅れであるが、そのぶん情報も多く、ひとり運営にとってはベストなタイミングであった。無償ならハードルが高い予算確保の苦労もないし、サーバーをやり繰りするなら今すぐにでも始められる。もし200台のサーバーが20台になれば、障害の頻度も10分の1以下になり、ひとりでも全サーバーを運営できるのではないかと考えるようになっていた。

 いくつかのサーバーを仮想化し、「これはイケる」と手ごたえを感じていたが、古いサーバーをやり繰りしているため、1台の物理サーバーにせいぜい2~3の仮想サーバーを動かすのが限界だった。昔は1台の物理サーバーに32ビットOSを1つインストールするのが普通だったので、CPUもメモリーも力不足であり、集約率が上がらないのが課題であった。

 とはいえ、2分の1、3分の1になるだけでも十分な価値がある。さらに、仮想イメージファイルを保存しておくだけで、システムを丸ごとバックアップができる。システム丸ごとスナップショットを取れば、何度もやり直しができるのは画期的であった。