IT部門がまさかの消滅、たった一人のIT担当者と200台のサーバーが残された。この実話を当事者の著者が語る「ひとり情シス顛末記」。セカンドシーズンでは、読者の質問や批判に著者が答えているが、今回の質問は「ひとりが本当に理想なのか。属人化するではないか」というツッコミ。はたして著者はどう答えるのか。

読者の質問・批判

 著者の成瀬氏は「ひとり情シスを理想の体制」と言うが、何か無理しているような気がする。理想の“人数”は1人ではないはずだ。本音では、何人が適正だと考えているのだろうか。いずれにしろ、少人数の体制では業務は必ず属人化するはずだ。属人化させることで、IT要員はなくてはならない存在になるが、それでよいのだろうか。

 ひとり情シスをやらざるを得ない状況であり、うまく運営すれば理想の体制になるとしても、もちろん「たったひとり」が理想というわけではない。「理想のIT要員の人数は何人?」といった質問も寄せられたので、ひとり情シスの先にある組織や体制について考えてみる。

 ひとりの仕事を長く続けてきたので、だいぶ慣れてきたとは言え、それでもひとりは心細い。私はもともと神経質で臆病で心配症である。病気で私が長期休業した結果、エンジニアが1人採用されることを知ったとき、どんなレベルの人が来るのかわからなくても、これまでにない安心感を覚えた。

 企業のIT要員は何人が理想か、と聞かれたら3人と答えるだろう。2人だと、どちらかが休みのときは一人で不安になってしまうし、4人以上だと手を抜いたり集団に依存したりする人が必ず出てくるからだ。仕事が増えても3人でできるような仕組みに変えていけばよい。さすがに大企業では3人は無理であるが、ITの進化やサービスの成熟化で将来はそれも可能になるかもしれない。

1分で分かる「ひとり情シス顛末記」あらすじ
  • ピーク時には10人いたIT部門が消滅、著者も他部署に異動になり、居候状態で200台のサーバーを一人で管理することに
  • 企業のIT環境がこんな状況では良くないと考えた著者は、IT部門の復活を期して経営への提言を行おうとするが、情報は経営に上がらず、二度の直訴も失敗
  • 「ひとり情シスでやる」と意を決した著者は、まず老朽化した200台のサーバーを仮想化して管理可能状態にした。
  • 続いて、ITベンダーに丸投げしていた基幹システムのうち、データベースの管理を取り戻し、データガバナンスを確立。
  • さらに業務部門の要望に応え、業務システムの内製化にも取り組み、基幹システムのデータや業務部門に埋もれているデータを有効活用できるようにするとともに、データの一元管理をさらに推進した。
  • こうした取り組みにもかかわらず、ITや著者に対する意識や評価は変わらなかった。
  • 人間ドックで病気が発覚、著者は手術と入院で3カ月間にわたり出社できない事態になったが、社内のシステムは止まることなく、業務に影響を及ぼすような大事に至らなかった。
  • ただ、ひとり情シスのリスクを実感した会社は、IT担当者を新たにアサインし、長かったひとり情シス状態から脱却することになった。