ITインフラの運営に猿マネは禁物――。10人もいたIT部門のまさかの消滅で、たった一人のIT担当者になった著者が、IT環境の建て直しに挑む。この「ひとり情シス顛末記」は大評判になった分、読者から「どのようなインフラ環境で運営しているのか」との質問が殺到した。だが、著者はそうした質問には冷やかだ。

読者の質問・批判

 成瀬氏はなぜパブリッククラウドを利用しないのか理解に苦しむ。ひとり情シスを運用するうえで大きな助けになるはずなのに、オンプレミスの環境を維持しているのは不審だ。そもそもインフラ周りの環境はどのようなものなのか。製造業なのだからFA系のシステムもあるはずだ。システムトラブルやレスポンスダウンなどへの備えもどうやっているかも含め、ぜひ知りたい。

 読者アンケートでは、私の会社での具体的なシステム構成や運用管理環境を詳しく知りたがる人が多かった。しかし、はっきり言ってしまえば、そんなことを聞いても所詮は他人の会社、何の役にも立たない。しかも、私が採用したものの多くは鉄板構成(無難なもの)であり、面白みのある環境ではない。

 しかし、私自身も知りたい欲求が強いので、皆さんの気持ちはよくわかる。まずはみなさんの欲求を満足させるとしよう。

 製造業の子会社といっても自社に工場はないので、FA(ファクトリーオートメーション)系やメインフレームなどの特殊なコンピュータは無い。UNIX系のサーバーが一部にある程度で、ほとんどがx86系のPCサーバー。仮想化がうまくいったのは、それが理由かもしれない。

 社員400人に対して250台のサーバーは多すぎると感じた人もいたが、人数はあくまでも社員の数である。協力会社や親会社もサーバーやシステムを使うので、正確に数えたことはないが実際は1000人以上の利用者がいると思われる。また、製品開発のために使用したファイルサーバーなどの環境は、しばらく残しておかなければならないため、どうしてもサーバーが増え続けてしまう。

1分で分かる「ひとり情シス顛末記」あらすじ
  • ピーク時には10人いたIT部門が消滅、著者も他部署に異動になり、居候状態で200台のサーバーを一人で管理することに
  • 企業のIT環境がこんな状況では良くないと考えた著者は、IT部門の復活を期して経営への提言を行おうとするが、情報は経営に上がらず、二度の直訴も失敗
  • 「ひとり情シスでやる」と意を決した著者は、まず老朽化した200台のサーバーを仮想化して管理可能状態にした。
  • 続いて、ITベンダーに丸投げしていた基幹システムのうち、データベースの管理を取り戻し、データガバナンスを確立。
  • さらに業務部門の要望に応え、業務システムの内製化にも取り組み、基幹システムのデータや業務部門に埋もれているデータを有効活用できるようにするとともに、データの一元管理をさらに推進した。
  • こうした取り組みにもかかわらず、ITや著者に対する意識や評価は変わらなかった。
  • 人間ドックで病気が発覚、著者は手術と入院で3カ月間にわたり出社できない事態になったが、社内のシステムは止まることなく、業務に影響を及ぼすような大事に至らなかった。
  • ただ、ひとり情シスのリスクを実感した会社は、IT担当者を新たにアサインし、長かったひとり情シス状態から脱却することになった。

 そのような状況でもあり、サーバー500台ぐらいは一人で面倒を見られるようにするイメージで環境を構築してきた。昔はハードウエアの性能で苦労することが多かったので、当時はまだ高価だった10Gスイッチを二重化し、大規模向けの高性能NASストレージを導入した。おかげで、性能面で苦労することはほとんどない。機材にコストがかかるぶん、P2V(Physical to Virtual:仮想化)などの作業は全て自分で行うことでコストを削減した。

 一番大切なデータはバックアップを取っているが、この辺りも割り切った運用だ。ストレージは米ネットアップの製品を使用しているので、夜間にファイルや仮想サーバーを丸ごとスナップショットにして、遠隔地のミラー先に飛ばしているだけである。この方法はシンプルで楽なのだが、最近では差分データが多くなり、ネットワーク負荷が高くなってきたので改善を検討しているところだ。他のストレージメーカーの製品でもそう大差はないはずだ。