「次の産業革命」に向けて技術革新が急速な勢いで進行している。今から14年後の2030年に、ヒトゲノムの解析時間は現在の38時間が94秒に短縮、現時点では少なくとも2日間を要するといわれる米連邦議会図書館にあるすべてのデータのダウンロードはわずか3分で終わるといわれる。この技術革新の進展により「次の産業革命」が実現され、デジタルシフトが一気に加速する。当社が世界の4000社を対象に実施したデジタルビジネスに関する意識調査によると、回答した企業の77%がスタートアップ企業を脅威と感じ、47%は3年後には産業の境界が分からなくなると予測する。スタートアップ企業は最新ITを存分に活用でき有利に働くが、既存企業では現行システムが変革を進める上での足かせとなりかねない。

デジタルシフトはいたるところに
企業連合で多用な選択肢を提供

 デジタルシフトを加速するために企業はITに関する2つの課題の同時解決を図る必要がある。その1つは既存の基幹系システムを最適化してコストを下げながら、信頼性、堅牢性、拡張性、俊敏性を高めること。もう1つはデジタル変革を推進する新規アプリケーションのプラットフォーム確立と、風土、人材、技術・スキルを整備することだ。EMCは、デジタルシフトに取り組む企業に多様な選択肢を提供する。毎年、研究開発に売り上げの12%を投下し、新たな技術を得るためのM&A(合併・買収)に10%を投資し、幅広い製品とサービスの提供によって顧客のデジタルシフトに貢献する。

 まず身近に感じるデジタルシフトの例を紹介しよう。米映画製作会社ライトストーム・エンターテインメントのケースはそのひとつだ。大ヒットした3D映画「アバター」の続編で、2018年公開予定の「アバター2」ではフィルムを一切使わないフルデジタル制作を一段と進めた。ロサンゼルスの撮影・編集スタジオとニュージーランドの映像デジタル加工会社をインターネットで結び、EMCのストレージとコンバージドプラットフォームによって24時間体制のデジタル制作を実現した。これにより、視聴者にかつてない体験を提供するとともに、映画制作のコストとスピードを劇的に改善することに成功した。

 世界をリードする伝統的な企業においてもデジタルシフトが加速し、画期的なビジネス成果をもたらしている。ゼネラル・エレクトリック社(GE)はIoTによる航空機エンジンのリアルタイム監視から得た膨大なデータをもとに新たな知見を構築し、飛行の安全性はもとよりエンジン整備の大幅な品質向上やコスト削減を実現した。ここで構築されたプラットフォームは産業を超えて公共や資源分野などへも適用できるインダストリアルインターネットのプラットフォームへと発展し、新たなビジネスモデルを創出していくことになる。また、フォード・モーター社は自らを自動車企業であるとともに、モビリティー企業となることを掲げ、デジタルビジネスとして新しいサービスの開発と導入を加速している。車上エンターテインメント、空き駐車場案内、モバイル統合サービス、走行データ収集などの実証実験を世界25カ所で展開している。

デジタルビジネスへのアプローチ
デジタルビジネスへのアプローチ

デジタル時代の成功へ導くサイクルの確立

 EMCグループ企業であるPivotal社は設立当初から携わってきたシリコンバレーの有力インターネット企業におけるソフトウエア開発環境や文化の構築支援を通じて得た経験を生かして、現在世界の企業におけるデジタル変革の支援を行っている。スピード、コラボレーション、ビジョン、テクノロジーに代表されるシリコンバレーの精神をビジネスモデルや先端技術とともにお客様へ提供する。

 デジタルシフトを成功に導くには、まずはデータ→アナリティクス→アプリケーション→データ、というサイクルを確立することが重要だ。ビジネスに関係するありとあらゆるデータを収集し、一元的に蓄積していく。膨大なデータ量を多面的に活用していくための格納方法としてデータレイク技術を採用することを推奨する。この膨大なデータから新たな知見・予見を生み出すデータサイエンス技術の蓄積を素早くアプリケーションへと展開するアジャイル開発技術の整備も肝要だ。また開発されたアプリケーションを俊敏に市場投入できるクラウドネイティブのプラットフォーム構築も欠かせない。これらのデータ→アナリティクス→アプリケーション→データのサイクルをいかに早く回すかがデジタル時代の企業の競争力を左右するといっても過言ではないだろう。これらのサイクル確立とともに重要なことが、シリコンバレー精神に代表されるデジタル時代の企業風土の確立と人材育成、組織能力向上である。

 EMCグループは、最新ITの提供はもとより、デジタル時代の新たなビジネス・サイクル確立、それを支援する企業カルチャー構築や人材育成にわたって、顧客企業のデジタルシフトに強力に貢献していくことを目指している。